ニッケイ新聞 2010年9月1日付け
「我が校の創始者は日 本でマサヒコ・キムラ師匠から習った」。この週末にサンパウロ市内の日本館で開催された、欧州盆栽学校ブラジル分校主催の盆栽展で、スペイン分校校長(亜国生まれ)に質問すると、そんな答えが返ってきた。木村正彦といえばあの有名な格闘家かと思って首をかしげていたら、まったく別人のことだった▼日本を代表する盆栽作家、木村正彦は厚生労働大臣の「卓越技能章」(現代の名工)を始めとする数々の賞を受け、世界に盆栽普及を図っている有名人だった▼ブラジル分校の校長に聞けば、本校はイタリアのミラノに所在し、世界十数カ国に分校がある。校長は日伊二重国籍のブラジル人だが、仲間からは本国寄りの「イタリア人」扱いされているのが興味深い。盆栽を軸にしつつも国際的というよりは、無国籍と多国籍の間のような雰囲気が漂う▼日本文化が当地に広まるには2系統がある。一つは日本移民が直接に持ちこむ経路で、盆踊りやヤキソバのように徐々に庶民レベルから一般社会に浸透していく▼もう一つは欧米のブームが飛び火する経路で、これが日本移民や日系人の存在によって身近なものに感じる触媒効果により、マンガやアニメ、寿司や刺身などのように富裕層や中産階級から広まるパターンだ。日本移民は盆栽協会を作ってこなかったから、盆栽は後者の方だろう▼格闘技の木村正彦は1951年に来伯し、リオのマラカナンでエリオ・グレーシー(前田光世から柔道を習いブラジリアン柔術を創始)と対戦して一本勝ちして話題を呼び、柔道普及に大貢献した。盆栽の〃キムラ〃もぜひ来伯し、イッポンを決めて欲しい。(深)