ニッケイ新聞 2010年9月3日付け
6月にVeja誌が労働者党(PT)内で対立候補糾弾のために機密文書(ドシエー)作成への動きがあった事を報じた後、民主社会党(PSDB)のジョゼ・セーラ氏の娘の個人情報閲覧には偽造文書まで利用された事が判明し、PSDBが選挙裁判所に告訴したと2日付伯字紙が報じた。国税庁にまつわる疑惑の数々に、大統領選挙を巡る攻防の裏で、国税庁長官更迭の声も出始めている様だ。
PTによるドシエー作成疑惑はセーラ氏陣営にとっても大統領選でのジウマ・ロウセフ氏糾弾材料だが、セーラ氏の娘、ヴェロニカ氏の個人情報漏洩では公文書偽造も行われた事が判明し、PSDB側の動きが一気に加速した。
6月に個人情報漏洩が判明したPSDB副党首のエドゥアルド・ジョルジ氏に続き、カルドーゾ政権の通信相ルイス・カルロス・メンドンサ氏や同伯銀頭取リカルド・セルジオ・デ・オリヴェイラ氏、セーラ氏のいとこの配偶者グレゴリオ・マリン・プレシアド氏の情報漏洩判明と伯字紙が報じたのは8月26日だ。
その翌日、国税庁は、個人情報を売買する組織があり、組織の人間が金を払ってPSDB関係者の情報を閲覧させたと説明。閲覧に使用されたコンピューターの管理者や閲覧に使用された暗証の持ち主が名指しで告発されたが、本人達が自分達は犯罪には関与していないと弁明していた矢先の1日、ヴェロニカ氏の個人情報も閲覧されていたと伯字紙が報じた。
ヴェロニカ氏情報閲覧では更に2人の職員が告発されたが、告発された職員の一人が本人の求めでコピーした証拠として提出した書類の署名は偽物で、認証した筈の登記所の責任者名にも誤記がある事などで、文書偽造が判明した。
オリヴェイラ氏やヴェロニカ氏の名前は、6月4日付フォーリャ紙などがPTの大統領候補ジウマ・ロウセフ氏の選挙参謀が個人情報を集めていたと報じた人物リストの中にも出ており、セーラ氏やPSDBは、ジウマ陣営は公的機関やその職権まで悪用して選挙妨害を試みたと反発。
一連の個人情報漏洩は軍政時代の政府のやり方そのもので、民主主義を根幹から揺るがすものと考えたPSDBは1日、ジウマ氏と同氏友人で選挙参謀のベロ・オリゾンテ元市長フェルナンド・ピメンテウ氏、選挙参謀に入っていたジャーナリストのルイス・ランゼッタ、アマウリ・ジュニオル両氏と、オタシリオ・カルタクソ国税庁長官、アントニオ・カルロス・コスタ・ダヴィラ国税庁主任の名を上げ、選挙裁判所に告訴した。
一方、大統領選への影響を気にするルーラ大統領は、ジウマ氏に同件への言及を避ける様指示。政府関係者からは、国税庁への信頼失墜を招き、政局にも混乱を来したカルタクソ長官更迭を支持する声も出始めている。