ニッケイ新聞 2010年9月3日付け
投票日まであと一カ月に迫り、大勢が固まりつつある。大統領選ではジウマ候補が、サンパウロ州知事選ではアウキミン候補が過半数を制しそうな勢いだ。とくに政見放送が始まってからの急転具合は、当地のテレビの影響力の大きさを伺わせる〃テレビ民主主義〃的な傾向といえる▼各候補の政策を知るには、政見放送より各局の単独インタビューの方が適当だが、コラム子程度のポ語力ではジウマ候補の主張は半分も分からない。セーラ候補の方が平易な表現をし、政策提言も多彩で経験を伺わせる落ち着いた語り口だ。これだけ見たら後者に票が集まりそうだが、そうなっていないのは実際の対決がルーラ対セーラになっているからだろう▼秀逸なものを感じるのはマリナ候補の存在感だ。ルーラ人気をジウマに乗り移らせることに見事成功し、セーラが大きく得票可能性を落としているのに、彼女は独歩をゆき、アマゾンの大自然を光背に持つカリスマ感すら漂わせる▼先日、コリンチアンス蹴球団が4年後のW杯のサンパウロ市開幕試合会場に名乗りをあげたのも象徴的だった。ルーラ大統領が熱狂的なファンなのは有名だが、同チームが設立当初から大衆を基盤としており、ルーラの支持者とぴったり重なる▼最初の候補会場だったSPFCのモルンビーは富裕地区だったが今回はゾナ・レステ(東部)。ここ数年間で下流から中流階級に浮上した住民が多く住む地区であり、ブラジル経済の中で下中流層が膨らんできて、相対的に上流層よりも影響を持つようになってきていることを象徴している。知的な雰囲気のセーラより、時代の勢いは大衆出身のルーラなのだろうか。(深)