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司法と立法で食い違う理解=麻薬密売者をどう扱うか=初犯で少量所持は即釈放?=4年で逮捕者倍増の実態は

ニッケイ新聞 2010年9月4日付け

 最高裁判所が麻薬密売者も個々の実態に応じて扱うべきとの判断を下した1日、上院の憲政委員会が麻薬密売を含む重犯罪はより厳しく扱うべきとする法案を承認したと2日付エスタード紙が報じた。3日付フォーリャ紙には、麻薬密売による逮捕者は4年で倍増したが、この様相も最高裁判断後は変わる可能性が出てくる。

 麻薬常用者や麻薬にまつわる犯罪の増加は世界的な問題だが、周辺国で精製された麻薬が欧米などに流れる経由地ともなるブラジルでは、麻薬密売者やその組織の撲滅は年々比重が増している課題の一つでもある。
 ところが、麻薬犯罪撲滅のために日夜労する警官らの努力を無にしかねないのが、今回最高裁が下した、密売者も個々の実態に従って扱うべきとの判断だ。
 08年の場合、麻薬密売に係わったとして逮捕された6万9049人の内、所持量も僅かで武器も持たず組織にも属さないという小規模密売が80%。23%は女性で、初犯で刑務所での更生教育は不要と見られる者も55%いたという。
 一方、3日付フォーリャ紙によれば、09年の麻薬密売による逮捕者は、06年の4万5千人からほぼ倍増の8万6千人。サンパウロ州での今年の逮捕者は、7月13日までに1万207人を数えた。
 この逮捕者数拡大は、麻薬常用者や密売者の拡大も反映したものだが、今回の最高裁判断で、最低5年とされる実刑判決が、代替刑が適用できる4年以下または刑の執行停止もありうる2年以下にまで縮小される可能性が出てくる。現行法は、麻薬の輸出入、精製・加工、購入、販売、提供、貯蔵、仲介の全てを犯罪として扱う。
 刑期縮小のための判断材料は、初犯か、家族がいるか、組織のメンバーか、所持量はどの位だったかなど。麻薬密売組織と直接関係していない麻薬使用者が少量を他人に売り渡した場合など、小規模密売で刑期縮小の恩恵を受けた判例は08年以降、高等裁判所でも報告されていた。
 これに対し上院の憲政委員会は、麻薬密売や強姦、誘拐などの重犯罪者には、刑期の66%終了後は日中を刑務所外で過ごす事を認めうるという原則を適用せず、刑期の最低80%は服役させるなど、より厳しい内容とする事を承認した。
 同法案は下院での審議を経る必要があるが、09年10月22日付エスタード紙が、政府は小規模密売者の刑務所収監を避けたい意向と報じたのには逆行しており、司法と立法の理解の違いで現場の警察官に戸惑いが生じる可能性もある。
 最新統計での麻薬密売者は、全逮捕者47万4千人の18%だが、刑務所の収監者で見た場合、09年の麻薬密売者収監率は06年の23%を上回るほぼ50%。最高裁判断に従えば、組織加入の可能性もある小規模密売者が巷に増えると懸念する声も高まりそうだ。

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