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盆栽普及に尽力するブラジル人=文協との協力関係深め=メストレ日高治を顕彰=「ブラジル独自の発展を」

ニッケイ新聞 2010年9月4日付け

 8月28、29日にサンパウロ市イビラプエラ公園内の日本館で開催された第2回伯亜国際盆栽展では、全伯から持ち寄られた選りすぐりの約65点が飾られ、国内を代表する盆栽作家として戦後移民の日高治さん(75、宮崎、アチバイア在住)が顕彰された。文協と4年前に創立された欧州盆栽学校ブラジル分校の共催で、今後はこの日本館を拠点として、市場規模の大きいサンパウロ市での普及に力をいれていくという。盆栽展示は7日まで。

 「(絵画や彫刻のような)完成美ではなく、常に過程として成長する生きた美としての盆栽に惹かれる」。同ブラジル分校の創立者にして校長、ジョゼ・ルイス・フリジェリオさん(61、伯伊二重国籍)は、この道に入った理由をそう説明する。文協との協力関係を深め、展示会を重ねてサンパウロ市での普及に力を入れたいと語気を強めた。
 両日とも全伯から集まった約60人の愛好者向けの実技講座が行われた。講師の一人、スペイン分校のシッコ・フェルナンデス校長(亜国生まれ)は、「ラテン系(伊<イタリア>、西<スペイン>、伯、亜など)は豊かな想像力を駆使して、この木が自然にあったらどうなるかを発想する」と特徴を説明した。
 欧州盆栽学校の本校はイタリアのミラノにあり、創立者サルバトレ・リポラセさんは25年前に訪日して、盆栽作家の第一人者である木村正彦さんに学び、帰国後にスタジオ・ボタニコを始め、それが発展して22年前に同校になった。現在ではフランスなど十数カ国に分校があるという。入学すると3年間の通信講座があり、毎年1週間の集中授業を経て卒業資格が与えられる。
 同校関係者、ボンサイカイという盆栽栽培会社を経営するマルシオ・アウグスト・アゼベードさん(46)は、「まだブラジルで盆栽は知られていないので、現在の生徒は20人ていど。日本館は展示会にうってつけの場所だ」と賞賛した。国内の盆栽愛好者は5万人程度、盆栽を自分で作る人は約300人だという。
 会場には黒松や楓などの通常の作品に加え、実のついたジャボチカベイラなどの当地の原生植物を使ったものも展示された。
 当日、顕彰された日高さんは、1960年に渡伯、アチバイアのタンケ区で農業一筋。幼少時から祖父の盆栽の手伝いをさせられ、農業高校でも習い、その後、当地で独学を重ねた。
 バラ、カーネーション、菊、サマンバイアなどの栽培で生計を立てながらも、盆栽を続けて名が知られるようになり、今ではブラジル人から指導を請われ、ベレン、ナタル、レシフェ、ジョアンペソア、リオ、パラナなど全伯に出張する。
 来場者の梶原サキさん(63、鹿児島県、イタペセリカ・ダ・セーラ在住)は「キレイな盆栽ばかり、こんなにたくさんあるとは思わなかった」と感想を語った。
 日高さんは展示作品を見渡し、「欧州風の立派な作品ばかりだが、なんと言うか、谷間の岩場で強風に耐えた風情の和風の盆栽というよりは、どこか畑ですっと育ったような感じで今一つ」と評する。
 「欧州の盆栽は、北欧の雪の重みに耐えたような風情が特徴だが、ブラジルにはそんな環境はない。ここ独自の盆栽を作らなきゃいけない。私なんかは日本のやり方で頭が固まってるからダメ。ここの人が独自の世界を作らなきゃ」と勧めた。