ニッケイ新聞 2010年9月4日付け
サンパウロも鮨ブームで「手巻き」とかのへんちくりんなものも人気が高い。近頃は日本から「牛丼」の店が進出したとかでそれなりに繁盛しているらしいのは、大いに喜ばしい。外国人向けの日本料理としては、鮨・天麩羅・すき焼きの三品が決まりだったのだが、日本を訪れる観光客を対象に調べたところ「ラーメン」がトップに踊り出たの新聞記事があった。そういえば、こちらも日本から職人がきて店を開けたらブラジル人が詰め掛けているそうだ▼あの豚肉のチャウシュウやメンマと細かく刻んだ葱がスープの上の「支那そば」は確かに美味い。拉麺と書くので中国の料理と思いがちだけれども、あれはれっきとした日本料理であり、最初に食べたのは水戸黄門の光圀とされる。儒者・朱舜水を水戸に呼んだときに厨房に入り調理したらしいのだが、これは明らかに中国式のものであり、今のラーメンとは異なるらしい▼日本で初めてのは明治17年(1884)に函館の「養和軒」の説もあるが、どうも史料的にはっきりしない。そこで明治43年(1910)に東京・浅草に店開きした「広東支那蕎麦来来軒」が正解と見る人が多い。一杯が6銭の記録があり、只今だと一金3000円に換算されると物の本にはある。珍しさもあってちょっと高かったのだろうが、真に残念ながら―この老舗も昭和53年に暖簾を降ろしてしまった▼そして今はさながら「ラーメン天国」である。北は札幌に始まり南は博多と地域名物が乱立し、店は全国に約3万もあるからやはり凄い。とは云っても、さすがに鮨屋の4万近くには遠く及ばない。(遯)