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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月7日付け

 剣を天に掲げ「独立か死か」と叫ぶ騎乗のドン・ペドロ1世の勇姿は、今もイピランガの独立記念像に雄渾に彫られ市民たちから親しまれている。宗主国ポルトガルとの政治的な抗争があり、帰国命令を拒否しての独立宣言だった。ジョゼ・ボニファシオなどの強い支持も大きな力となったが、ブラジルを独立国としたペドロ1世の功績は大きい。きょう9月7日が記念日であり、あの雄雄しき叫びは1822年であった▼国の独立や建国を祝うのは、何処の国でも同じだし、ブラジルも首都ブラジリアを始め各州でも盛大な記念式典が開かれ、国民もお祭り騒ぎのような大賑わいとなる。その昔は、近隣諸国の軍艦が祝賀のためリオに参集したそうだが、日本も、独立100周年の1922年(大正11年)九月に海軍練習艦「浅間」・「磐手」・「出雲」を派遣し、駐伯公使の堀口九萬一氏を政府の特派大使に任命し参列させた▼故九萬一氏は文化勲章を受賞した詩人・堀口大学の実父だけれども、日本の「建国の日」に外国から海軍のお祝いがあるのかどうか。戦後になると、どうも「建国」を喜ぶという気風が足りなくなってしまった。2月11日にも家庭で「日の丸」を掲揚するところは殆どないのも寂しい▼あのオリエント学者・三笠宮崇仁さまが史学会で「建国記念日」の制定に反対だと発言したが、否決され話題となったことも。こうした歪さはあるものの近年は、大した騒ぎもなく記念日が執り行なわれるようになったのは喜ばしい。あのドン・ペドロ1世は独立150周年からイピランガの独立記念銅像の地下に眠る。(遯)