ニッケイ新聞 2010年9月10日付け
8日夜の大統領選候補者のTV公開討論会に労働者党(PT)のジウマ・ロウセフ氏が欠席し、ジウマ氏やルーラ大統領がテレビ政見放送でジウマ氏擁護発言を行った事に非難集中と9日付エスタード紙が報じた。
昨年の支持率調査で圧倒的優位だった民主社会党(PSDB)ジョゼ・セーラ氏やPSDB関係者らの個人情報が不正手段で閲覧され、ブログなどでも流された機密文書(ドシエー)事件は、民主主義の根幹を揺るがす問題であるにも拘らず、ジウマ氏は言明を避け、討論会にも欠席。
一方、7日のジウマ氏の政見放送では20%の時間を使って個人情報漏洩に触れたルーラ大統領が、ジウマ氏擁護とセーラ氏批判をするのみで、被害者の事を顧みた発言は一言もないなど、参加候補3人(セーラ氏、緑の党のマリーナ・シウヴァ氏、自由社会党のプリニオ・デ・A・サンパイオ氏)の矛先は一様にジウマ氏やルーラ大統領に。参加者同士の質疑も無論あったが、討論会前後もジウマ氏の欠席を良しとしない意見が一般メディアやインターネットで流れたようだ。
ルーラ大統領が政見放送でジウマ氏は同事件とは無関係で、セーラ氏は事実無根の糾弾を行っていると批判したりした事については、選挙高等裁判所が8日、政府が調査中の事でもあり、一国の長であるルーラ大統領自身が同事件に言及する事は、公的宣言と取られかねないとし、政見放送での大統領発言は不適切との判断を下したと9日付サイト記事が報じた。同日付エスタード紙も、ルーラ大統領の言動は一党員、一国民としての範囲を超えているとのサンパウロ総合大学教授の見解を掲載している。
PTの下院リーダーの一人は「国民はルーラ大統領の側に居り、テレビでの大統領発言は国民皆に浸透する」との見解を示したと9日付フォーリャ紙にもあるが、国民人気に乗った大統領によるゴリ押しは選挙戦の意義をも損ないかねない。