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島田正市芸能生活60周年記念公演=1500人が偉業称える=「初心に返り頑張っていく」=しっぽり島田メロディも

ニッケイ新聞 2010年9月14日付け

 「初心に返り、稲穂のように頭を垂れて頑張っていきたい」。紋付羽織袴姿で壇上に立った大御所の新たな決意をコロニアは拍手で称えた―。作曲家でカラオケ界の重鎮、島田正市さん(74)の芸能生活60周年を記念した特別公演が文協大講堂で12日、正午・午後4時の二部制で行われ、約1500人がコロニア芸能の粋を楽しんだ。丹下セツ子さん、花柳寿美富浩、花柳龍千夛両社中をはじめとする豪華キャストが友情出演、門下生の歌手らが新旧名曲のほか、「サンパウロブルース」など島田さんの代表曲などを豪華な衣装で披露した。バックバンド「ゴールデン・スターズ・オーケストラ」を指揮するのは、白いスーツと黒い蝶ネクタイでバッチリ決めた島田正市その人だ。

 『北国のふるさとへ 股旅シリーズ』と題された第一部は、威勢よく響太鼓の演奏から始まった。「北国の春」「津軽平野」「潮来笠」などを島田門下を代表し、宮城ソランジェ、西川ドウグラス、井川昭さんらが歌い上げた。
 寸劇「平手酒造」では、丹下さんが若手と軽妙な掛け合いを繰り広げた後、バンドのトンチンカンな演奏でなかなか退場できない様をコミカルに演じ、会場を笑いの渦に巻き込んだ。
 幕の合間には、島田さんが作曲、百周年のテーマ曲となった「海を渡って100周年」をブラジル健康表現体操協会(川添敏江代表)が披露した。
 第二部は島田正市作品集で「しっぽりと艶歌で」聞かせる趣向。
 日本でも発売された往年の名曲「サンパウロブルース」「恋のバイバイ」のほか、新曲「男だぜ」「今日かぎり」、丹下さんの旗揚げ公演時に作曲した「私の過去等聞かないで」(丹下セツ子作詞)など情緒あふれる島田メロディーが、会場を昭和の雰囲気に誘った。
 この日のためにおろしたという羽織袴姿で壇上の中央にマイクを片手にあいさつに立った島田さんは、「コロニアのおかげで60年間やってこれた。悲しいこと、嬉しいこと、淋しいこと色々あった」と感慨深い表情を見せ、「(空襲で失った)亡き母の『やりなさい』という声が聞こえたことから本公演を思い立った。本日より初心にかえり、実った稲穂のように頭を下げて頑張りたい。これからも皆様のお力添えをー」と深く頭を下げると、会場からは万雷の拍手が起こった。
 日本からの祝電が読み上げられた後、孫のあかりちゃん(2)、輝ちゃん(4)から花束贈呈があり、島田さんは満面の笑みを見せていた。
 フィナーレは、「恋のバイバイ」で島田ファミリー、丹下さんらが総出演、賑やかに大団円を迎えた。会場は拍手と笑顔で島田さんの長年にわたる音楽生活を祝福するとともに、これからの活躍にもエールを送っていた。
 「とても良かった」。公演の感想を話す田中みち子さんは、「島田さんがコロニアで一番。今はカラオケがあるけど、それ以前から、音楽だけでやってこられたのは大変なこと」と長年の苦労をねぎらった。
 パウリスタ・カラオケ連合(UPK)の会長を計10年務めた結城ルイスさんは、「UPKが潰れそうになったときも島田先生が命を張ってくれた。先生なくしてコロニアの音楽界はない」と感動した面持ちで話していた。