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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月14日付け

 ロシアの山火事やパキスタンの大洪水と今年の天気はどうもおかしい。日本にしても秋が近づき二十四節気の「白露」を迎えた8日にも、熱気が列島に満ち全国の213地点で猛暑日を記録した。猛暑日は最高気温が35度以上の日を指すのだが、今は残暑の季節にしてもかなり暑すぎる。いや、これも地球温暖化のせいか瑞穂の国も暑くなっている。この10年間に東京、大阪などの4都市では猛暑日が3350回も起きているのだから―「暑い」のが。もう当たり前なのだ▼おまけに日本は湿気が多い。サンパウロは少ないのでちょっと暑くとも凌ぎやすいのだが、先頃は14%の低さになり火事が多発し、幼い子らが気管支炎かで病院に駆け込み酸素吸入器をつける大騒ぎになった。これとはまったく逆なのが列島であり、あの炎暑と汗で参ってしまうのは毎年のことだし、総理大臣らが沖縄の郷土着「かりゆし」を着るのも、とてもよくわかる▼この酷暑を避けようと政治家や財界の人々が軽井沢や冷涼の鄙びたところに別荘を持ち思索に耽り、ときには恋が生まれたりもするらしい。が、庶民らはせいぜい「海水浴」だし、これとても人込みの中に飛び込むようなものであり、さながら通勤電車の混雑である。昔なら仕事の疲れや病気を癒す「潮湯治」だったろうが、もうそんな悠長な保養など許さない時代になった▼それでは静かな山裾の温泉宿でのんびりしようと思っても、ひと昔前のお爺さんやお婆さんのように1ヵ月近くも逗留する湯治も今は夢のまた夢ではあるまいか。せかせかと忙しいばかりの世―そんな気もする。(遯)