ニッケイ新聞 2010年9月16日付け
少雨に伴う異常乾燥が長引き、アマゾン川に流れ込むソリモエンス川やネグロ川の水位が極度に低下している他、牧畜や柑橘類の収穫などにも深刻な影響が出ていると、13~15日付伯字紙が報じている。火災の多発も相変わらずで、焼畑を禁じてもなお勢いが衰えない状況だ。
移民船で来伯し、河口に入ってもまだ海の真ん中にいると思っていたという経験を持つ人も多いアマゾン川。そこに流れ込むソリモンエス川やネグロ川も水量の豊富さは周知の事だが、観測100年を誇るネグロ川は13日、大旱魃だった1963年の同日付水位を4センチ下回る水深19・64メートルを記録。
観測30年のソリモンエス川も2005年の旱魃で記録した水位を下回り、13日までに流域の7市が非常事態宣言を発令。ネグロ川が流れ込むマナウス市では、市内を走るイガラペ(小水路)の底が見え、水上家屋の脚も日光を浴びている。
水上運輸に頼る地域では物流にも影響が出ており、孤立した地域への物資輸送にはヘリコプターが必要な状況だ。アマゾナス州や非常事態宣言発令の自治体では連邦政府の支援も要請したが、返答は来ていないという。
パンタナルの景観の変化がいわれるマット・グロッソ州など、河川やダムの水位低下は全国的なもので、灌漑用水の不足も深刻だ。
牧畜を見た場合、少雨で牧草が育たないために起きる牛の体重減少に悩む農業関係者は、減収覚悟で体重が減った牛を売るか、生産コストがかさむ事を覚悟で体重回復を待つかの選択を迫られている。旱魃が長引けば肉の値上りは不可避で、他の農業生産物と共にインフレ要因となりうる。
また、サンパウロ州などで20~30%減収と心配されているのはオレンジ。水分が減ってしぼんだ状態になったり実が育たないため、1箱当たりの個数は20%近く増やさねばならない上、地面に落ちる実も多くなる。
雨が降らなければ植付けを遅らせるという大豆の場合、大豆自体への影響は少ないが、その後の綿の種蒔きが遅れるという悪循環を生む。年内に種を蒔かないと夏の雨の被害が拡大するため、柑橘類の栽培農家や牧畜農家同様、早い雨を待つ農家は多い様だ。
本紙でも何度か取り上げた火災も深刻で、トカンチンス州では14日だけで700カ所で火災発生。農作物収穫後の焼畑を禁じた州もあるが、道路脇まで迫る火や煙で視界がきかず死亡事故が起きたり、広大な面積の原生林が焼けたりと被害報告は後を絶たない。
農作物で病気減少、サンパウロ州ポルト・フェリースで水位が下がった川底の泥の中から300年前にバンデイランテス達が使ったと見られる丸木舟発見など、思いがけない副産物もあるが、そろそろ雨が欲しいところだ。