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日系候補得票の集中化を=乱立、共倒れに警鐘鳴らす=「意識した投票を」

ニッケイ新聞 2010年9月18日付け

 日系候補の得票を集中化させよう――。前回の2006年のサンパウロ州議選には30人もの日系候補が乱立し、票が割れすぎて一人も通らなかった反省に立ち、候補者を集めて話を聞くイベントが11日午前、文協貴賓室で行われた。木多喜八郎、与儀昭雄、森口イナシオら有志14氏による、日系候補の得票を集中化して有効に活かすための初取り組みで、連邦下議候補、サンパウロ州議候補6人ずつが熱心に自らの主張を説明した。木多氏は「連邦、州ともに3人程度に票が集中すれば、得票がより有効に活かされる。意識した投票を」と呼びかけた。

今回の州議候補は23人=当選ゼロの苦い経験超え

 30人が乱立した06年のサンパウロ州議選では、総得票数は33万票もあった。単純計算では少なくとも3人、場合によっては4人が当選できる可能性があったが、票が割れすぎて当選はゼロ・・・。
 うち3万票に達したの羽藤ジョージ候補(約3万9千票)と、昨年繰り上げ当選を果たした西本エリオ州議(6万4千票)の二人。下から19人は1万にも達しておらず、当選にはほど遠い。最下位のアデマル・ナオト・ノザキ候補などは91票のみだった。
 今回の選挙にも23人が立候補し、うち6人が壇上にあがった。
 西本エリオ氏は、父がプレジデンテ・プルデンテ市営市場で野菜商を、自分も20年前にパステレイロをしていたと庶民派らしい自己紹介をし、94年からサンジョゼ・ドス・カンポス市での市議4期の実績と、昨年から州議としてエメンダ・パルラメンタル(議員割り当て金)で多くの日系団体やイベントに支援してきたことを強調し、現職の経験と強みを見せた。
 28年間もサンパウロ市市議を務めた羽藤ジョージ氏は飲酒運転取締り法(レイ・セッカ)やサンタクルス病院経営の日系人への返還運動、日系高齢者を狙った少年強盗団を警察と連係して退治した実績を語り、「コムニダーデのために尽くしたおかげで幾つもの裁判を抱えることになったが、私にとってはむしろ誇りである」と胸をはった。
 故小林パウロ連邦下議の息子、ヴィットル氏は、自ら設立したIPK(NGO団体)が呼びかけて企業からの出資を仲介し、この5年間に300協会(うち7割が日系)に800万レアルもの支援をしてきた実績を説明し、「当選する前からこれだけやってきた。この経験を議会で活かしたい」とのべた。
 その他、治安向上を訴えるシモニ・イエダ氏、ネットによる選挙活動を中心にしたマルセロ・ミヤザキ氏、スポーツ振興を謳うマルコス・シマブクロ氏らが演説した。

連邦下議に17人乱立=気を吐くベテラン3人

 連邦下議候補者も6人が立会った。06年は10人が立候補して2人当選した。日系候補の全得票数は約25万票、うち飯星ワルテル氏が10万1千、ウイリアン・ウー氏が11万3千で当選しており、残り8人は全て8千票以下。得票の集中率は高く、無駄は少なかった。ところが今回は17人も出馬しており、乱立状態だ。
 サンパウロ州議3期の後にモジ市長を2期務めたベテラン安部順二氏は、93年に日伯修好百周年準備委員会創立に州議の立場から関わったことを振り返り、94年のコチア産組、南伯農協の崩壊を惜しみ、「日系人が教育に力を入れてきたように、公立学校を全日制にして教育レベル向上をしたい」と訴えた。
 飯星候補は、任期4年の間に合計600万レアルの議員割り当て金を日系団体を中心に持ってきた実績に加え、百周年時の伯日議連会長を務め、デカセギや駐在員に裨益する日伯年金協定締結、現在は高速鉄道構想に日本の新幹線を売り込むことに注力していることをアピール、「日系団体が空洞化している。日本文化を愛する非日系を含めた若者を呼び寄せ、活性化することを支援していく」と宣言した。
 ウー氏も同様に600万レアルの議員割り当て金に加え、地デジ日伯方式採用に飯星氏と一緒に尽力した経緯をのべ、ビザなし外国人に永住権を与えるアニスチア法を通すなどの立法実績の多さを強調した。「次の4年間は政治改革が重要。もっと権力を監視しなくては」と語った。
 さらに元スザノ市長のペドロ・イシダ氏、環境問題のテレザ・アラガキ氏、マリオ・ヤマシタ氏が講演した。