ニッケイ新聞 2010年9月23日付け
ブラジル日本商工会議所(中山立夫会頭)の9月度昼食会が10日に開かれ、日本大使館の澤田洋典参事官が「2010年ブラジル大統領選について」をテーマに講演した。
澤田参事官は熊本県出身で、これまでに大使館3度、マナウス、ポルト・アレグレなどで勤務してきた。大統領選について講演するのは、昨年11月の同昼食会以来となる。
ダッタ・フォーリャ等の支持率調査でジルマ・ロウセフ候補がジョゼ・セーラ候補に20ポイント以上の差をつけている現状について、「これだけの差がつくとは予想していなかった」と発言。
06年の選挙で投票直前の候補者支持率が縮まり決選投票になったことに触れて「最後まで何が起こるかわからない」としながらも、このままいけばジルマ氏が一次投票で当選する可能性もあるとの見方を示した。
リードの要因として、雇用・賃金など現在の国内経済成長を受けて国民の継続志向が強いこと、またルーラ現大統領の支持が高く、ジルマ氏自身も選挙経験の少なさをテレビでのパフォーマンス、行政能力でバランスを取ったとした。
一方のセーラ氏は、国民の現状への満足度によりルーラ大統領批判が難しいことから戦略が難しく、政策的には大きな違いがないと指摘。また、PSDBの支持が高い南・南東伯での支持が伸びていないと説明した。
次期政権の見通しについても分析を述べた。 第1期ルーラ政権で鉱山動力大臣に抜擢、05年から官房長官を務め、大統領から「PAC(政府の経済加速計画)の母」と呼ばれるジルマ氏については、実務型であり、財政均衡、インフレの段階的削減とあわせ、産業振興やインフラ整備を通じて基本的には成長維持の方向と予想。
注目点としては、商品流通税の簡素化など税制改革、土地なし農民運動、麻薬、貧困層の削減など社会的取り組みを挙げた。対日関係については、日本方式が採用された地デジ放送規格の選定、日伯社会保障協定の準備交渉に携わった経緯などに触れ、「期待が持てると思う」と述べた。
知事や連邦大臣、上議、市長など多彩な経験があるセーラ氏に関しては、低金利とレアル高の是正、貿易拡大や先進国との関係強化を目指し、外交面でも現政権の路線を修正するのではとの予想を述べた。
参事官はどちらの候補が勝っても政治的な安定は続くとした。また選挙後のルーラ大統領について、政治改革、政界再編へ役割を果たす一方で、ブラジルの成功をアフリカなどの途上国へ広げる国際貢献活動を行なっていくだろうとの見通しを語った。
澤田参事官は翌週、3年半のブラジル勤務を終え、次の任地であるシカゴ総領事館へと赴任した。