ニッケイ新聞 2010年9月30日付け
世界経済危機から2年が過ぎようとする今、日本市場もようやく落ち着きを取り戻し、デカセギから再就職の朗報が舞い込む。7万人が帰国したとされるが、月間の日本入国者3115人、ブラジル入国者8472人という昨年度の数字は、今年5月までの平均で3729人、5050人へと変化。こういった情況を受け、一旦店を畳んでいたデカセギ集住地区のブラジル商店でも再開に向けた準備が進められているようだ。26日付エスタード紙が報じた。
1千人以上のデカセギ労働者を扱う派遣会社のフナツマル・ロメウさん(37)によれば、平均6カ月の契約雇用が増加。「失業中でもすでに住居を構えており、引越しをためらう人が多いなど、地方都市での労働によっては空きも出ている状態」と説明する。
ただし、フナツマルさんが指摘するのは、経済危機後に採用条件が厳しくなっている点。優れた日本語能力や場に応じた行動を取れることに加え、特殊機具を扱える能力も重要という。雇用状況が回復をみせる中、研修待遇でブラジル人の半分以下の賃金で働く中国人、インドネシア人、フィリピン人などの労働力に差異を見出さなければならない。
カワニシ・エリカさん(27)は日本に5年間滞在した後、経済危機で仕事を失い、夫と共にパラナ州ロンドリーナへ帰郷していたが、その4カ月後に夫に仕事が見つかり愛知県岡崎市へ。カワニシさんは求職中の時期を見計らって、日本政府より月額1710レアル相当の奨学金を受け取りながら、名古屋市内の専門学校で情報処理を学んでいる。
こういった状況に「やっと好機が訪れた!」と喜びの声を上げるのは、岐阜県でブッフェを営んでいた石橋イラニルダさん(35)。経済危機後、デカセギが帰伯するのと同時に客足が急激に途絶えると、品質を落とすことも、価格を下げることもできずに一旦は店を畳むしかなかった。この間、経営や情報処理の学びに励んだ石橋さんは、街にデカセギが戻り始めた今、再度店を開ける決意をしている。
一方、中には経済危機の影響にも負けず徐々に成長を続けた店も。高橋マルシアさん(25)のブラジル人向け婦人服店第1号店は2008年にオープン。ブラジルブランドを集めて人気を呼び、来月には三重県で3店目をオープンするという勢いを見せている。