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特別投稿=政界で活躍する日系人─1票を大切に─オガワ・アキオ

ニッケイ新聞 2010年10月1日付け

 大統領、州知事、上院下院議員、州議会議員の選挙が10月3日、いよいよ間近に迫った。ブラジルでは投票は国民の義務だが、多くの人が面倒なことだと思っていることだろう。
 どの政治家も汚職にまみれ、誰がなっても同じこと、当選したって何もしてくれない、だから自分は無効票にする、白紙投票する─そういった、いかにもな言い訳をしながら、意味がない価値がないと、政治への関心がないことを正当化してしまう。
 しかし、投票は本来「権利」であり、これを正しく行使することは、民主主義の世の中では、ブラジルをよくするための直接的行為だ。政治を行う者は国民の選択によるわけで、自分たちの代表、自分たちの顔だと思っていいだろう。だからこそ1票1票の価値を生かしてほしいと思う。
 私たちができることは、立候補が認められている人の中から選ぶことだけなのだから、有権者は、役職の機能や候補者がどういう人間か、また以前に当選したことがある候補なら任期中に何をしたのかなどをきちんと知っておくことが必要だ。候補者たちの活動内容や公約は、今日インターネットを通じて簡単に知ることができる。
 かつての日系議員は、日系人からの支持で当選し、その数は限られていた。そういうモデルを崩したのが、故パウロ・コバヤシ氏だった。彼が最初の当選を果たしたのは、主に予備校の教え子たちの票によるもので、日系社会に登場したのはそのあとのことだ。
 今度の選挙には、連邦下院議員に18人、サンパウロ州議会議員に27人の日系人が立候補している。
 「これでは誰も当選しない」「候補者をしぼるべきだ。文協はそれを率先してするべき」「今回もまた日系不在か」などといった声が、コミュニティの中でささやかれている。
 候補者たちは、市民の要望に応える義務がある。しかし、有権者たちがそれを望むなら、有権者側にもそれなりにやるべきことがあることを、認識しておきたい。
 あくまでも強制ということではないが、できれば自分が選んだ候補者の活動を宣伝したり、金銭的な余裕があるなら資金援助をしたり、ビラ配りを手伝ったり、集会を開いて候補者の所信表明を聞く場を設けたり、彼らに期待をする分、そのくらいのことをして支援してもいいのではないかと思っている。
 日系団体は、定款にある「政治活動への参加禁止」の条項を盾に、そのような活動を避ける傾向にあるが、これは政治活動なのではなく、よりよいコミュニティづくりへの積極的な参加である。 コミュニティ内における政治的な意識づくりへの動きは、聖南西文化体育連合(UCES)およびリベイラ沿岸日系団体連合会(FENIVAR)がイニシアティブをとって活発に活動している。
 連邦議員候補と州議会議員を一人づつ、定例会議に参加してもらったり、夕食会に呼ぶなどして、彼らの考えを聞くと同時に、各地区のリーダーや日系団体との交流を図っている。
 これらの会合に参加した候補者たちを以下に紹介したい(アルファベット順)。

【連邦下院議員候補】

◎ジュンジ・アベ(DEM)
 農業家、長年にわたり地方組合の長を務める。州議会議員当選2回、モジ・ダス・クルーゼス市長を2期務めたのち、後継者が市長に当選した。

◎ヴァルテル・イイホシ(DEM)
 4年前の選挙で連邦下院議員に初当選、数々の仕事をこなし任期をまっとうした。当選後には、日本的に協力を得た地域へのお礼訪問も忘れず、コミュニティへの協力を惜しまず尽力してくれた。とくに百周年時には伯日議員連盟の会長として活躍した。

◎ウィリアン・ウー(PPS)
 サンパウロ市議会議員を2期、2006年の選挙で連邦下院議員に当選。外国人への永住権付与と身分証明書の全国統一制度というふたつの大きな法律が承認された。日系社会への寄与も大きい。現伯日議員連盟会長。

 以上の3人は、日系社会を代表するのみならず、ブラジル国家の発展に大きな役割を果たす人材であり、誇りをもって応援したい。

【サンパウロ州議会議員候補】

◎エリオ・ニシモト(PSDB)
 サン・ジョゼ・ドス・カンポス市議員に4期連続で当選、市の発展に尽くした。06年の選挙でサンパウロ州議に出馬し、日系では史上最多の6万4千票を獲得し補欠となった。09年1月に昇格、正式に州議員となる。
 2010年3月までの任期中は、州議会のなかでも最も実行力のある議員として、また、唯一の日系人として活躍した。
 日系社会との親交を深め、かつて議会から援助を受けたことのない日系団体にも、いくつか恩恵をもたらした。ヴァーレ・ド・パライーバ地域の各市からの支持が大きい。

◎ジョージ・ハト(PMDB)
 現在サンパウロ市議会議員連続7期目をまっとう中。市民の権利を守るために骨身を惜しまず働いている。
 環境問題やアルコール(飲酒)問題において、議会調査委員会(CPI)のけん引役となっている。

◎ヴィトル・コバヤシ
(PSDB)
 パウロ・コバヤシ氏の子息。08年にサンパウロ市議会議員に立候補した。インスティチュート・パウロ・コバヤシを創設し、一般および高齢者向けパソコンの普及活動を行っており、日系社会への貢献度は高い。
 日系社会、とくにサンパウロ州に住む人にとって、日系候補が当選することには深い意義があると思う。投票日までいくらもないが、たくさんの票が集まるように努力したい。