ニッケイ新聞 2010年10月2日付け
9月29日に国会が公務員報酬に関する新たな法案を承認した事を不服とする警察官デモが暴動化した30日、エクアドル政府は警官らの行動はクーデター未遂と位置づけ非常事態宣言を発令。スト中の警官らと直接対峙の折、催涙ガス弾を浴びたコレア大統領は、運び込まれた警察病院で10時間以上軟禁状態に置かれたが、同日深夜、軍により救出された。
1日付伯字紙などによると、30日朝、国会解散などをちらつかせての公務員報酬削減(警官と兵士に昇進の都度払われていたボーナスカットと昇進に必要な勤続年数の5年から7年への延長)法案可決を不満とする警官や一部兵士のデモが暴徒化。警察本部や国会、国際空港2カ所の制圧の他、混乱に乗じた商店略奪や破壊行為も報告されており、同国政府は非常事態宣言発令と共に軍の出動も要請した。
警官達のデモは各地で行われたが、混乱が激しかったのは首都キトや経済の中心地グアヤキル。
キトの警察本部前での混乱では1人死亡、約50人負傷と報じられており、現場に急行して「お前達が大統領を殺したいというなら私はここにいる。さあ、殺せ」と挑発した大統領には催涙ガス弾が投げつけられた。
30日付サイトなどには暴徒化した群集の中から駆け寄った男にガスマスクをはがされて顔をしかめる大統領の姿も掲載されたが、膝の手術直後の大統領は、松葉杖をついた状態で現場を離れ、警察病院へ運ばれた。
ところが、この病院を暴徒化した警官達が取り囲み、大統領は実質的な軟禁状態に置かれる事10時間余り。
この間、大統領官邸に支持者達を集め、クーデター拒絶と大統領救出を呼びかけたのはパティーニョ外相で、大統領が軟禁された病院前では、投石などで圧力をかける民衆に、警官達が催涙ガス弾で応酬する場面も見られた。
均衡が破れたのは、軍兵士を乗せたトラック2台が病院の前に横付けされた現地時間21時(ブラジリア時間23時)。警官と兵士が約20分間の攻防を繰返した後、病院内に踏み込んだ兵士に救出された大統領は、直ちに大統領官邸に運ばれ、支持者達の前で民主主義を脅かす警官達の行為を鋭く批判した。この時の攻防でも兵士1人が死亡している。
今回の暴動は軍司令部や国民の支持を得ておらず、大統領の辞任要求も出ていないため、クーデターにあらずとの見方もあるが、石油収入減少や逼迫財政、国会解散と総選挙への懸念など、同国が緊迫した状況下にあるのは事実だ。
昨年のホンジュラスの二の舞は避けたい南米諸国連合や米州機構は、即座に緊急会議を招集し、コレア大統領支持を決議表明。国連の潘基文事務総長も「民主制と選挙で選ばれた政府支持」の意向を表明している。