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■記者の眼■連邦で日系票集中化を=現職下議まさかの落選

ニッケイ新聞 2010年10月5日付け

 サンパウロ州選出の連邦下議選挙で、日系団体へのきめの細かい支援をして2期目を期待された現職の飯星ワルテル、ウイリアン・ウー2氏がまさかの落選となった一方で、安部順二氏が初当選を決め、子供が暴力事件の被害者で有名なオオタ氏も予想外の得票を集めた。
 つまり、日系コミュニティを中心基盤にした飯星氏、日系・韓国系・中国系などの支援を受けたウー氏は落ち、モジ市長としての実績から一般社会の支持を持つ安部氏、グローボTVのニュースなどで知名度の高いオオタ氏が当選した。
 一般社会からの支持の大きさの違いが当落を分けた。コミュニティ票で日系議員を押し上げることの難しさを改めて浮き彫りにした選挙だった。このまま日系票の効果が薄れていけば、政治家は日系社会の陳情を聞かなくなるだろう。
 ウー氏はもともと上議を目指していた関係で、下議出馬体制を作るのが出遅れたとの指摘もある。いずれ閣僚入りする器との評判が高いだけに残念な結果だ。
 飯星氏は補欠第6位となっている。もしアウキミンサンパウロ州知事が6人以上の連邦下議を州局長などに抜擢して空席が回ってくるか、もしくはセーラ氏が大統領選に勝って同様に大臣に抜擢すれば繰上げ当選圏内にいる。
 パラナ州選出の連邦下議選でも、キリスト教団体を支持基盤とする現職高山ヒデカズ氏のみ当選で、日系票を軸とする西森ルイス氏は健闘したが惜しくも落選となった。繰上げ当選が期待されるところだ。
 前回乱立して失敗したサンパウロ州議選ではサンジョゼ・ドス・カンポス一般市民を地盤とする西本エリオ、サンパウロ市北部一般住民や日系票を得た羽藤ジョージ両氏に加え、聖南西連合やリベイラ川沿岸連合が支援する非日系サムエル・モレイラ氏が当選した。下議では人数を減らしたがサンパウロ州議では大きな収獲があった。
 再選を果たした西本エリオ州議はニッケイ新聞の取材に答え、「信頼の票をこれだけたくさんいただき、本当に幸せです。日系コミュニティの代表として州議会で任期を続けられることに、大きな誇りと満足感を感じる。私が受けた票に報いるよう、倫理に基づいた仕事を見せていきたい」とのメールを寄せた。
 二、三世が中心となる今後の日系社会は、かつての一世時代のように日本政府や日本企業などの日本側からの支援を当てにするのではなく、地方自治体や連邦政府、現地企業との結びつきを強くする方向性こそが生き残る道だ。そのためには市議から市長、州議、連邦下議にいたる日系政治家、もしくは日系に好意的な非日系政治家の連鎖があったほうが、より有機的な効力を発揮する。
 日系団体は従来、政治には関わらない方針の所が多かった。でも、将来のことを考えれば、陳情する時だけ政治家を当てにするのでなく、普段からもっと政治家とのつながりを密にし、選挙時に協力するぐらいの姿勢がこれからは必要だ。
 たとえ日系候補がたくさん乱立しても、日系団体が組織的に支持表明をして票割れを防ぐ役割を果たし、日系票の集中化を進めないと日系政治家はどんどん離れていくだろう。次の市長市議の統一選挙はもう2年後だ。(深)