ニッケイ新聞 2010年10月5日付け
春を迎えて少し。サンパウロはまだ春寒料峭なので肌寒い。3日は大統領と州知事、連邦、州議選挙で街頭は最後の追い込みに奔走する人たちの熱気に満ちているが、電子投票器への手はいささか冷たい。この「清き一票」が暮らしの行方を決めると承知してはいても、誰に投票するかとなると悩みもあるし戸惑いも多い。選挙だけは、投票箱を開けてみるまでは、当落も神のみが知るだけだし、有権者の予測を裏切ることも▼首都の宮殿に座るのは誰か。世論調査ではロウセフ女史がトップで1回目の投票で決まるの観測が高かったのに獲得票は46%と決選投票に持ち込まれた。何故―こうも人気が凋落したのか。云うまでもなく腹心の官房長官と息子が絡む不正と疑惑が発覚し大騒ぎになったからであり、国民も物事をよく見ていると感嘆せざるをえない▼そして―この票は緑の党・マリーナ・シウヴァ候補に流れたと見ていい。アクレ州に生まれ育ったマリーナ女史は家が貧しく、通学もできず16歳まで文字が読めず書けないという不遇な暮らしだったけれども、努力の人であり環境派の政治家として活動している。選挙戦の始めの頃は、支持率7%だったのに19%超の得票率だから凄い。31日の再選挙で勝利を手にするのは、この緑の党の票がどちらに行くかで決まる▼決選投票はロウセフとセーラ両候補の対決となるが、市長と知事時代の実績を見ると、セーラ氏の行政手腕は極めて高い。取り分け近郊や地下鉄など鉄道とバス路線の整備と拡充は評価したい。選挙民がこれらをどう見るか―によって新大統領は決まる。(遯)