ニッケイ新聞 2010年10月6日付け
ギド・マンテガ財務相が4日、外国人向けの金融取引税(IOF)引上げを発表したと5日付伯字紙が報じた。9月30日の為替相場が過去2年間で最安値となる1ドル=1・692レアルを記録するなど、ドル流入とレアル高に歯止めが掛からない事に対応するための処置で、金利差を使って儲けようとする外国人投資家の動きを牽制する意味もあるようだ。
ペトロブラス株の購入を希望する外国人投資家らも殺到した9月は、24日までに8月比1101%増となる1445億ドルが流入したと9月30日付伯字紙が報じた時点で、実施が確実視されていたIOF引上げ。
急激な外資流入の背景には、IOF引上げ前の駆け込み投資もあったと見る関係者もいるが、市場の予想通り、統一選後に発表されたIOF引き上げ幅は4%。従来の2%が倍に引き上げられた事になるが、昨年10月の引上げとは違い、対象は外国人による固定利回り商品投資のみ。証券市場に対する外資投資や従来から対象外の外国直接投資(FDI)は対象から外され、ブラジル人による固定利回り商品への投資も2%のままだ。
マンテガ財相によると、今回のIOF引上げは急速に進むドル安、レアル高を抑制するのが目的で、9月29日の1ドル=1・705レアルを最後に、30日の1・692レアルなど、1ドル=1・70レアルの壁を維持できない上、ペトロブラスによる増資もレアル高抑制効果が見られなかった事が、引上げ決定の要因となった。
ブラジルへの外資流入の原因の一つは、政策金利の高さ。国際的な金融危機以降の金利引下げなどで実質的にゼロ金利という国の投資家にとり、自国内で調達した資金をブラジルに投資し、金利差による利益を自国に送るキャリートレードは魅力的な投資法の一つ。
順調に成長を続ける中国やブラジルは、外国人投資家にとり魅力的な市場である事は明らかだが、レアル高が進む事で国際的な競争力が削がれるのが貿易輸出。2日付伯字紙には、9月の輸入は前年同月比41・3%増の177億4千万ドルで、9月としては過去最高を記録した一方、貿易収支の黒字は109億3千万ドル、今年累計でも127億7700万ドルで、前年同期比40%減とある通りだ。
庶民には、少ない費用で外国旅行が出来る、輸入品が安く買えるなど、利点の方が多いと思われるレアル高も、輸出に期待する工業生産者などには頭痛の種で、早急な対策を要求する声も高かったが、今回のIOF引上げでどの位の効果が出るかは微妙な様子。
新興国への先進国通貨流入と新興国から先進国への投資は増大傾向で、財相は先進国の通貨政策への懸念も表明した。