ニッケイ新聞 2010年10月14日付け
ペルー北部のサンホセ鉱山の地底に閉じ込められていた鉱夫33人の救出作業が12日夜から始まり、13日17時01分に22人目のサムエウ・アヴァロス氏が救出された。13日付伯字紙やサイトによると、最初の鉱夫の地上到着は0時11分。最初は予定通り1人1時間のペースだったが、次第にペースも上がっており、早ければ13日中に作業完了の見通しさえ出始めている。
8月5日に起きた岩盤墜落事故で地底に閉じ込められた鉱夫33人の救出作業は、622メートルの竪穴とフェニックス(不死鳥)と名づけられたカプセルを利用するもので、最初の鉱夫フロレンシオ・アヴァロス氏が地上に到着した13日0時11分には、現場にいたピニェラ大統領や関係者、家族を始め、世界中が歓声を上げた。
救出作業は事故発生から丸68日を経た12日20時からと決まったものの、直前になってテストが繰返され、救助隊のマヌエウ・ゴンザーレス氏がカプセルに乗り込んだのは23時09分。同20分に降下を始めたカプセルが鉱道に着いたのは23時36分だった。
気温約40度、湿度も80%超の地底でカプセル到着を待ち構えていた鉱夫達は、事故以来初めて迎えた外界の人物、ゴンザーレス氏の指示に従い、フロレンシオ氏の身支度などを手伝った。
外界との気温差が大きく、長期間日光から遠ざかっていた鉱夫達は、特殊な衣服とサングラスなどを装着してカプセルに入るが、秒速1メートルの移動では血圧の変化や吐き気、耳の痛みなどが生じる可能性があり、引上げには細心の注意を要するため、竪穴の状況観察と作業中の体調変化などを報告する任務も受けたのがフロレンシオ氏。同氏の地底出発は23時55分、13日0時11分に地上に到着した。
その直後に2人、昼過ぎにも1人の救助隊員が地底に降り、地上と連携しての作業では、ボリビア人1人を含む鉱夫らが一人ずつ地上に向かう。
到着直後に医師の問診を受け、安全ベルトなどを外した後に家族らと再会した鉱夫達は、現場の施設とコピアポ市の病院で診察を受けるが、持病などがある第2グループ最後の鉱夫(16番目で12時45分地上到着)まで、大きな問題は報告されていない。
唯一のボリビア人鉱夫救出時に不在で批判されたエボ・モラレス大統領は、早朝にチリ入りして入院中の鉱夫を見舞った後、9時半ごろ現場に到着。ピニェラ大統領には、作業中もルーラ大統領ら各国首脳から電話が入り、世界中が注目している事が実証された。
鉱夫リーダーのドン・ルッショことルイス・ウルズア氏救出後、救助隊員らが引上げられて全行程が終るが、19歳から63歳までの33人救出には、チリ国民の心を一つにし、険悪だったボリビアとの関係修復の機会にとの期待もかかる。