ニッケイ新聞 2010年10月15日付け
サンパウロ高等裁判所では、飲酒運転で検挙されたが警官が指示したアルコール検査を拒否した男性に対し、正当性を認めるという予想外な判決が下された。2008年6月に施行開始のレイセッカで飲酒運転の基準が厳しくなった後、市内で検問にひっかかる運転手は増加傾向にある中、今回の判決はアルコール検査を拒む人の数を押し上げそうだ。14日付エスタード紙が報じた。
飲酒運転の規準は、血液1リットル中に0・6グラム(または呼気1リットル中に0・3ミリグラム)のアルコール分が検出された場合。検問では呼気又は血液検査による判定が行われる。
同裁判に加わったオジ・フェルナンデス判事も「せっかくの法令が効力を失っている」と嘆くのは、自分自身を罪に定めるような証拠をつくる義務はないと定めた法規があるため、運転手へのアルコール検査実施を強要できないからだ。今回の判決で、飲酒運転の疑いで検挙されても、この法規をたてにして検査を拒否する人が増える可能性が高まった。
飲酒運転の場合、957レアルの罰金や1年間の免許停止、身柄拘束の可能性があるが、検査が実施できなければ罪に定めることができず、法律上の抜け穴との指摘がでている。今回の裁判では検査拒否は正当と認められたが、現場の警官は運転手は飲酒状態と判断しており、罰金や免停、3年までの禁固刑が言い渡されてもおかしくない状況だったという。
サンパウロ市では2007年4月から先週までに12834カ所で検問が行われ、26万8647人がアルコール検査を受けている。同期間中にアルコール検査を拒否した人は1518人、飲酒運転とみなされたのは1765人で、酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度が0・1~0・29ミリグラム、血中濃度が0・2~0・59グラム)で罰金が科されたのは9841人だった。
昨年5月にパラナ州クリチーバで飲酒運転だった州議員フェルナンド・リバ・カルリ・フィーリョ氏が起こした事故で息子のジルマール・ラファエルさんを亡くしたクリスチアーナ・ヤレドさんは、今回の判決に憤りを隠せない。「法廷は殺人者を歓迎しているようだ」と批判するクリスチアーナさんは、平和交通の基金も立ち上げており、「こういった問題には、我々被害者が社会と一体となって立ち向かわなければ」と意気込む。
ビール1杯分のアルコールが体から抜けきるのは摂取から6時間後、グラス1杯のウイスキーなら24時間は運転を控えた方が良いようだ。