ニッケイ新聞 2010年10月15日付け
型のない絵に短い言葉をさっと添える。ハガキ大の絵手紙が人と人との心を繋ぐー。絵手紙は2つの節目の年を迎える。創始者の小池邦夫氏の活動50年と、日本絵手紙協会創立15周年だ。それらを記念した展覧会が9月パリで開催され、同展に出品した峯誉さん(67、大阪)夫妻、寺前ヒサエさん(66、大阪)夫妻が帰国前に、交流の深いサンパウロ絵手紙友の会(石井恵子会長)に立ち寄り、指導を行うなどして交流を深めた。
友の会と寺前さんが開く大阪の絵手紙教室は3年以上の付き合いで、教材が送られたり、個人同士で絵手紙の交換をしている。書く題材は四季、イベント、身の回りの物まで幅広い。
「一言で思いが伝わる。構えずに書くことで、心が温まり、繋がりが生まれました」と石井さんはその魅力を語り、同会の西谷律子さんと口を揃えて、「ブラジルには本当に情報が少なく、和紙も無い。教材が届いたときはものすごく感動した。大阪の人の支えを貰ってここまでやってこられた」と振り返る。
共に初の来伯となった峯さんと寺前さんは友の会の案内でイグアスの滝、リオデジャネイロを見て回った。
峯さんは、新聞やテレビから題材を得て絵手紙を書くことを4年以上毎日欠かさず続けている。毎朝切手を貼り、投函。その宛名は一緒に住む妻の志津子さんだ。「1枚15分、癖みたいなもの」と笑う。志津子さんは「毎日の郵便屋さんのバイクの音が楽しみ」と目を細める。峯さんは「技術ではなく、どう気持ちを素直に表現するかが大切」とその極意を話す。喧嘩した時には「ごめん」と書いたことも。
カフェの白い花、フルーツ、キリスト像などブラジルでも毎日書くことは止めなかった。「イグアスの滝には驚いた。あの迫力を書けるかどうか」と目を輝かせる。これまでに奥さんに宛てた絵手紙は3冊の本になって出版されている。
「下手でいい、下手がいい。心が伝わればいい」と創始者の小池氏の教えを語る寺前さん。峯さんの指導を受け絵手紙暦は12年、講師は8年以上務める。今回のブラジルの訪問に際し和紙や画材も友の会に寄付した他、小池氏に手紙を送り、同氏から40センチ大の大きな富士が描かれた絵手紙を受け取り、持参した。「小池先生が作品を書いてくれる機会は滅多にない」と寺前さんは喜びを表した。その絵手紙は友の会に寄付され、16、17日に開催される石川県人会の文化祭でも展示される。その他、節目の年を祝い同祭では大阪の教室の作品も150点ほど飾られる。2人は29日に友の会会員らに絵手紙の指導も行った。