ニッケイ新聞 2010年10月16日付け
サンパウロ州ロザナ市で公共のゴミ捨て場に捨てられた水銀を持ち帰った子供達が中毒に陥るという事件が起き、管理責任を問われた市当局に8300レアルの罰金が言い渡された。瓦礫の捨て場に病院からのゴミも混じるなど、環境や衛生面の問題も含む管理体制不備は、各地で蔓延している現状を再び立証した。
15日付伯字紙やサイトによると、事の発端はサンパウロ市から748キロのロザナ市のゴミ捨て場に捨てられていた水銀で、見つけた子供が自宅に持ち帰り、家中にばら撒いて遊んだ上、学校にも持参し汚染拡大。約50人に異常が見られ、12人が中毒症状で苦しんだ。
8歳と10歳の兄弟が20本のフラスコ詰めの上、プラスチックの袋に入れて捨ててあった水銀1・5キロを見つけたのは6月の事。車が頻繁に通る街道沿いの現場は本来、市が管理する瓦礫の捨て場だが、外部者の立ち入りを禁ずるための対策も採られておらず、注射器やゴム手袋などのゴミも捨てられていた。
歯科医の診療所で使うものと見られる水銀は使用期限を過ぎたため他のゴミと一緒に捨てられた様だが、何も知らない子供達には、床などに落ちてできる銀色の球はきれいで自由に形の変わる遊び道具に他ならない。
ところが、この水銀は体内に吸収、蓄積すると中毒を起こす厄介者で、蒸気化したものは肺から容易に取り込まれる。
子供達が遊んだ後の水銀はベッドの下や庭、学校などに放置され、多くの人が水銀に触れたり、蒸気を吸い込んだりしたため、6月29日から母親、兄弟5人が中毒症状に陥ったアントゥーネス一家など、130人を対象に行った検査で、血中の水銀濃度などに異常があったのは約50人。12人は発熱や頭痛、内臓や神経障害などの中毒症状を起こし、アントゥーネス家の子供2人は複数の病院に入院し、今も投薬治療中だ。母親やその他の子供もめまいや頭痛を訴えており、父親は失業。汚染家屋3軒は立ち入り禁止となった。
蛍光灯や体温計、バッテリー、医療現場など、広範囲に使われる水銀は汚染の程度によっては死ももたらす。子供達が遊ぶに任せた大人達は症状が出てから事の重大さに気づいた様だが、怖さを熟知する筈の医療従事者が無造作に捨てたものが巡り巡って、市内にばら撒かれた結果の責任を問われたのは市役所。水銀投棄の責任者はまだ判明していない。
国内排出の150トン/日のゴミの内、病院関係のものは1~3%だが、蛍光灯が壊れた時大気中に霧散する水銀や体温計の水銀などは、少量でも健康被害が懸念される。保健省によると、病院関係のゴミを分別収集する自治体は63%で、化学的な処理も含め適切に処理できているのは18%のみ。36%は焼却処理をしているもののその場所は空き地など、適切とは言い難い様だ。