ニッケイ新聞 2010年10月16日付け
15日のグローボTVボンジア・ブラジル報道によれば、国家法律審議会(CNJ)は国内の受刑者受け入れ体制が崩壊寸前にあるとの調査結果を発表した。収監者約50万人のうち40%は裁判を受けておらず、5万5千人は刑務所にも行けずに警察署の留置所で刑期を終えるという。
暴力犯罪が増えるほど収監者は増加する。留置所ですし詰めになって、容疑者の無数の手だけが鉄格子から出されている姿は、日常的に報道されている光景だ。今回、同審議会が全伯の警察署を調査した結果、受刑者の受け入れ状態は崩壊寸前にあると報告された。
パラナ州北部イヴァポラン市の刑務所には、最大40人収容のはずの場所に、なんと170人が詰め込まれている。その結果、暴動が頻発し、最後の暴動では刑務所全壊の危機に直面した。鎮圧に当たった警察官の1人は、「囚人が計画した集団脱走を阻止しなければならなかった」という。
一方、全国の刑務所を視察した同審議会が目にしたのは、不潔な監獄に動物のように詰め込まれ、裁判を受けることすらない囚人の姿で、留置場の監視のため、本業の捜査に専念できない捜査官さえいるのが現実だ。
留置所での収監者が多い例はミナス、サンパウロ、バイーアの各州で、これら3州だけで3万人が入れられている。しかし、最も酷いのはパラナ州で、都市の市街地中心部近くにある警察署に、合計1万5300人もが収監されている。大半の建物は老朽化し、保安面で問題が生じている。
オスニウド・カルネイロ捜査官は、警察署の留置場で刑期を過ごさせることは違法だと訴える。パラナ州では裁判によって刑が確定したにも関わらず、刑務所がいっぱいで留置場にいる受刑者が2千人もいる。
「導火線に火のついた火薬の樽を抱えているようなもの。このままでは取り返しのつかない悲劇になる恐れがある」。カルネイロ捜査官はそう強調し、警鐘を鳴らした。
これに対し、コメンテーターのアレサンドロ・ガルシア氏は、「政治家は、ブラジルのような暴力事件は世界中で起きているというが、けしてそうではない」と責任の所在を追及する。
ブラジル人は今年8月までに100億ドルを外国旅行などで消費したが、来伯する外国人観光客は40億ドルしか使っておらず、その大半はサンタカタリーナ州に行くアルゼンチン人だ。「これが意味するのは、トロビカルで素晴らしい自然環境を誇る国内観光地は、治安に問題を抱え、対応も悪く汚くて満足できず、その分、外国へ観光客が逃げているという兆候だ」と分析する。
その上で、「刑務所の混沌とした状態は20年前からなんら変わるところはない。今は市民自らが(自宅に)鉄格子を作ってその後ろに隠れているが、それでも襲われている」と結んだ。