驚くべき犯罪組織の武力=公権力の2倍の銃器持つ=隠れた武器密輸出国に
ニッケイ新聞 2010年10月20日付け
19日付けエスタード紙やアゴラ紙などによれば、警察が持つ銃器などの2倍の軽武器を犯罪組織が所有している可能性があるとの調査結果が報じられ、専門家たちは「驚くべき無管理状態」だとコメントしている。
この調査は、ジェノバ国際高等研究所とNGO団体ビバ・リオが公表したもの。銃器販売は公式には制限されているにも関わらず、国内の兵器産業に莫大な利益をもたらしていると警告を発している。ブラジルは近年、西洋では米国に次ぐ軽武器生産国に変貌したという。
国内全体の軽銃器の総量は1690万丁と推計され、連邦警察および軍警などの州警が所有する80万丁と軍隊の130万丁を足した政府機関の総量は210万丁にしかならない。
一方、個人所有の1480万丁のうち940万丁は非合法的に所有されている。犯罪組織はそのうちの520万丁を持っていると見られ、公的権力の2倍と積算されている。ちなみに警備会社などの私企業が合法的に所有するのは30万丁。
同NGO団体が02年に行った同種調査と比較すると、軽武器の総量が当時の1500万丁から現在までに10%も増えた。人口当りで最も銃所有が多いのは首都ブラジリアで、住民100人当り19~28丁。サンパウロは9・5~19丁となっている。
国内の犯罪で使われて罪のない市民を殺したり、傷つけたりしている銃の大半は国内で生産されている。にも関わらず兵器産業は連邦議会に働きかけて、銃の所有認可手続きを簡素化させようとしていると同研究所は警鐘を鳴らす。
「ブラジル内で使われている銃器の大半は家内制手工業のような状態で生産されており、輸入品ではない」と同研究所の専門家はいう。中でも銃製造の老舗タウロス社は、米国への販売という面で〃戴冠用宝石〃(最も目立つ存在)だと指摘する。
国内の軽武器生産は公的には1億ドル市場だといわれるが、闇市場を含めればそれより遥かに大きいと推測されている。
同研究所は、輸出統計がもっと透明化されないと実態がわからないとする。07年までのこの25年間で輸出量は3倍になり、1億9900万ドルに達していると推測されている。04年からだけで倍増という勢いだ。
輸出品は、狩猟用ライフルという偽装をされている可能性が指摘されている。例えば、書類上の輸出品目は狩猟用ライフル1丁となっているが、重さは6トン、価格は48万6千ドルという異常なケースもあるという。01年にアビブラス社はマレーシアにミサイル装備一式を売った疑いを持たれているが、80~90年代にもサウジアラビアなどへの輸出でも同様の異常がみられる。
ブラジル兵器産業の〃お得意様〃には、イラク、リビア、アンゴラ、パキスタン、コロンビアなどの紛争を抱えた国々の名前もある。特に国内が半ばゲリラとの戦争状態にあるコロンビアはこの25年間、第2番目の弾薬購入国となっているという。