ニッケイ新聞 2010年10月26日付け
決選投票日まで残りわずかとなった23日、ルーラ大統領秘書室長と労働者党(PT)が大サンパウロ市圏サントアンドレ市での汚職容疑で起訴されたとの記事をエスタード紙が掲載。翌24日には、ロメウ・トゥーマ・ジュニオール元国家法務局長官が、ジウマ・ロウセフ氏や大統領秘書室長らが機密文書(ドシエー)作成を要求していた可能性を示す発言との記事も続いて出ている。
決選投票直前の疑惑報道が大統領選に及ぼす影響のほどは判断し難いが、25日には連邦警察がエレニセ・ゲーラ元官房長官とドシエー事件の鍵を握るジャーナリストのアマウリー・リベイロ・ジュニオール氏の事情聴取など、物々しさが一段と増したようだ。
23、24日の報道に共通して出てくるジウベルト・カルヴァーリョ大統領秘書室長は、サンパウロ州サントアンドレ市で1997~2002年に市長を務め、2002年に殺害されたセウソ・ダニエル氏の右腕だった人物。当時の同市では公共交通関連企業への袖の下要求が横行しており、同市予算530万レアルを時のPT党首ジョゼ・ジルセウ氏に横流していたとの容疑がかかっている。
元市長殺害では、警備担当のセルジオ・ゴメス・ダ・ソンブラ容疑者ら7人が逮捕された。横流しされた資金は、PTのメンサロン事件にも関係したと見られており、カルヴァーリョ氏ら起訴の情報に、ABC地区の検察局関係者は歓喜の声を上げたという。
一方、トゥーマ元法務局長官は、元同僚で後任のペドロ・アブラモヴァイ現長官が、ジウマ・ロウセフ氏や大統領秘書室長から機密文書(ドシエー)作成をしつこく求められて困っていると漏らしていたと証言。
「現政権の邪魔をする人々を陥れるためのドシエーをつくれと求められて辟易している」との現長官の言葉は、盗聴記録にも出てきたもの。現長官はその内容を否定するが、元長官は、現長官がこぼしたのは一度や二度ではないと証言。民主社会党(PSDB)関係者の個人情報を集めたドシエーの存在は、6月始めにVeja誌が報じ、連警捜査が続いている。
また、ドシエー用の個人情報を盗むため、国税庁の資料閲覧を命じたとされるリベイロ氏のブラジリアでの宿泊先は、ジウマ氏の選挙活動の一端を担うPepper社の関係者で、大統領選告示前の準備を担当していた選挙参謀のルイス・ランゼッタ氏の友人でもあるジョルジ・ルイス・シケイラ氏の持ち家。
国税庁への資料閲覧請求作成の代書屋には1万2千レアルが支払われた他、口止め料の5千レアルはランゼッタ氏のランザ・コミュニケーションが口座を持つ銀行支店から振り込まれるなど、PT関係者には煙たい報道が続いており、25日夜の公開討論会での論点の一つになる事は必至だ。