ニッケイ新聞 2010年10月30日付け
サンパウロ市では、保育時間4~6時間の幼稚園に通っていた3歳から3歳11カ月までの幼児を、来年度からは10時間保育の保育園で受入れることを決定した。保育園は現在でも極端に定員枠が不足しており、多くの児童が入園を待っている状態。幼児教育現場の改善が懐疑されていると、27~29日付フォーリャ紙が取り上げた。
今回のサンパウロ市の決定は、2016年までに4、5歳児に就学前の準備期間となる幼稚園の通園を義務付けるという、連邦政府の方針を受けたもの。市内では、現在4万1千人の幼児が幼稚園入園を待つ。サンパウロ市はこれまで幼稚園で受入れていた3歳児を保育園での保育へと移し、その空いた枠を入園待ちの4、5歳児向けに充てようとする。
しかし、このしわ寄せが来るのは、もちろん受入れ側の保育園だ。サンパウロ市では、保育園に通っている幼児13万1千人に対し、保育園入園待ちの幼児はほぼ同数の12万5千人で、大幅な定員不足の状況に拍車がかかることは容易に予想できる。
教育局では、0~1歳児の場合、教師1人につき面倒をみられる幼児は7人だが、3歳児の場合は25人まで可能との理由で保育園の受入れ能力拡大を見込んでおり、年長幼児を優先して入園させることで0~1歳児の定員枠が狭まることにも批判が出ている。
カサビサンパウロ市長はその選挙公約で、こういった保育園入園待ちの幼児をゼロにすると掲げていたものの、入園待ちの幼児の数は増加する一方で、実現への道のりは長いようだ。
幼児教育現場の状況改善に向けて現在進められているのは、新たな施設の増加と、すでにある施設の拡張。フォーリャ紙の発表によれば、今年度予算中、保育園の新施設建設費は1863万レアルだが、実際に支出されたのは1182万レアルで63%。保育園の拡張事業では、1136万レアルの予算で45%の520万レアルしか費やされていない。
幼稚園に関しては、見積もられていた施設工事費2288万レアルに対し、支出されたのは36%の831万レアル。拡張事業は1398万レアルの予算のところ、たった13%の178万レアルの支出となっている。