ニッケイ新聞 2010年11月2日付け
ブラジルの民主化の歩みは紆余曲折を経ており、1889年11月15日のデオドーロ・ダ・フォンセッカ大統領誕生で旧共和制が始まってから、今日に至るまでには独裁や軍事政権を経験。民主主義体制は、通算してやっと40年に至ったところとなる。10月30日付エスタード紙がその歴史を振り返った。
1891年、デオドーロ大統領が三権分立を理念とする新憲法を制定し、男子普通選挙制を公布。ジューリオ・プレステス大統領までの共和政時代には人口の1・5~5・7%の投票で17人の大統領が選出された。
しかし、1930~45年に世界大恐慌の中で頭角を現したヴァルガス大統領が独裁体制で政権を握り、真の民主主義体制の始まりは、45年のエウリコ・ガスパール・ヅットラ大統領の選出。
翌年にヅットラ大統領が大統領の直接選挙、行政権の制限、司法権の強化などを定めた新憲法を発布し、これにより、労働者階級を基盤とする大衆を動員した政治運動が組織されるようになった1945~64年の期間はポプリズモの時代とも言われる。同時代には、ヴァルガス大統領の再選も含まれたが、この19年間が最初の民主主義の時代とされる。
再び軍事政権が始まったのは、軍部クーデターが起こった1964年3月。その後の21年間にはカステロ・ブランコ、コスタ・イ・シルヴァ、エミーリオ・ガラスタズ・メディシ、エルネスト・ガイゼル、ジョアン・フィゲイレドの5人の軍人出身大統領が政権を握っている。
1985年にはタンクレード・デ・アルメイダ・ネーヴェス氏が間接選挙で当選したが病気で急死し、同氏に代わってサルネイ副大統領が大統領に就任。サルネイ大統領が1988年に発布した大統領の権限を縮小する民主憲法が現在の民主主義体制の確立につながった。60年のジャニオ・クアドロス大統領選出の選挙以来、初の直接投票となった1990年選挙(コロル大統領選出)時には人口の45・04%が投票を行った。
その後の大統領直接選挙では、カルドーゾ大統領の第1期当選時に全人口の40・46%、ルーラ大統領の第1期当選時には49・66%が投票に参加。1988年から今回選挙で22年。通算40年のブラジルの民主主義体制期間は、最初の共和制を掲げてから3分の1、独立宣言からは21・3%、ブラジル発見からは10%で、決して長いとは言えない。しかし、その民主化の歩みは着実に前進している。