ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 小切手税は本当に必要か=14州知事は復活を希望=規定通り利用の州は半分=ブラジルは更なる重税国に?

小切手税は本当に必要か=14州知事は復活を希望=規定通り利用の州は半分=ブラジルは更なる重税国に?

ニッケイ新聞 2010年11月10日付け

 ルーラ大統領とジウマ次期大統領の共同会見以来、CPMF(いわゆる小切手税)復活を巡る記事が連日の様に新聞紙上を賑わしている。14州知事が復活を支持していると伝えられる中、小切手税復活を阻む動きも活発化しているようだ。

 3日に行われたルーラ大統領とジウマ次期大統領の共同会見で、ジウマ氏が州知事との交渉の余地を残すと発言した事は4日付伯字紙既報だが、5日付エスタード紙によると、小切手税の復活を支持している州知事は14人、反対は6人。
 ところが、保健行政に回すと規定された12%という比率を遵守してなかった州は、約半分の13州で、保健行政のための資金源としての目的と実際の用途が必ずしも一致してなかったと6日付エスタード紙が報道。保健行政への支出は税収増加率ほど増えてなかった事を伝えるブログ記事なども出ている。
 保健行政の資金源とする事を主目的として1994年に創設され、銀行に預けいれた資金を小切手やデビットカードなどで動かす度に課せられていた小切手税は、連邦会計に平均400億レアルの年収をもたらしており、その延長が2007年12月の上院会議で打ち切られた事は、ルーラ政権にとり最大の敗北ともいえる出来事だった。
 翌年提出の社会保険税(CSS)案は、小切手税消滅による税収減を補うべく、銀行資金を動かす度に0・1%課税するというものだったが、国会審議が中断されたままで、新政権では小切手税とCSS双方の承認が図られる可能性もある。
 小切手税復活に関しては、同税廃止後も保健行政への支出が実質的に減少しておらず、保健資金としての同税復活という主張は説得力を欠く。また、所得の40%近くが徴税され、重税国として知られるブラジルで、新たな税を課す事に対する抵抗も根強い。
 復活支持表明者の中にも、本当に保健行政に投じられるなら賛成だが、本来の目的に反した用途に使われるなら反対という知事がおり、経済の専門家からも、同税復活論議の前に、税収の適正配分や不要な経費の洗い直しをすべきとの声が出ているのも事実だ。
 7、8日付伯字紙によれば、野党側やサンパウロ州工業連盟(Fiesp)、全国工業連盟(CNI)、弁護士会(OAB)、商店主の団体などが次々に復活反対を表明。
 大統領選の公約で税制改革などを提唱し、当選後も、政策金利の引下げや政府負債額を国内総生産の43%から38%に削減するなどの目標を打ち出していたジウマ氏にとり、小切手税の復活論議は最初の試金石とも言えそうだ。
 支出を減らせば借金やそれにまつわる利息の支払も減るのは自明の理。国会では議員給などの引上げ審議も始まっているが、緊縮財政の実行も新政権の課題の一つだ。