ニッケイ新聞 2010年11月10日付け
F1、モーターショーなど国際イベントが目白押しの今月は、前半だけで40万人の観光客訪問を見込むサンパウロ市だが、インフラの不備が混乱を招いている。特に、1年間に27%の成長を遂げた航空市場では、業界がその伸びに遅れをとっているのは明らか。TAMやWebjetでは今年、乗務員不足による便のキャンセル、遅延が相次ぎ、パイロットの不足が問題視される。7日付エスタード紙が報じた。
国家航空庁(ANAC)の担当者は、「サッカーW杯開催の2014年までは、少なくとも毎年100人のパイロットを養成する必要がある」と話す。空路利用者は毎年増え、1年で利用者は全国で2千万人増えた。航空会社側も新たな航空路を設けて需要に応えたいところだ。
例えば、9月までに大手4社が導入した新たな航空機40機の運行には、規定上、約200人の新たなパイロットの契約が必要になるが、今年1~7月までにANACが発行したパイロットの免許は192件で、条件を満たしていない。
パイロットの免許の取得には時間と費用がかかるのが難点。養成課程では当然のごとく実習も積まなければいけないが、飛行訓練の1時間あたりの平均額は350レアルだという。TAS航空専門学校の経営者は、「以前にはVarigやVaspといった航空会社がパイロット養成を支援していたが、今ではそういった支援も少ない」と状況の変化を説明する。Anacでは今年、300万レアルを投資し、生徒の費用負担を軽くする働きかけもしている。
また、パイロット不足の問題は養成面だけではなく、パイロットのアジアや中東など国外市場への流出にも関係する。それは、国内では1万から1万5千レアルの月給が世界の相場では2万5千レアルであるため。ブラジルの航空法に関しては、外国人パイロットを雇えない規定がある。
こういった背景から、航空会社は経験の少ないパイロットを雇用。航空会社労組の専門家も、「以前なら飛行経験4千時間以下のパイロットを雇うことはなかったが、今では1千時間のパイロットも雇われる」と明かす。副パイロットでは専門学校を卒業したての人もいるほどで、実際にはパイロットが1人で操縦に責任を負うなど、安全性が問われている事態となっている。
一方で、Anacではこれまで一律だった航空税を各空港別に定められる新規制を計画。時間帯別に上限20%の値上げ、値下げが可能になる見込みで、それによる影響も論議を呼んでいる。