ニッケイ新聞 2010年11月13日付け
11、12両日にかけて韓国ソウルで行われていたG20サミットは、首脳宣言を採択して閉幕した。G1サイトなどによると、米中通貨安への直接的な言及はないまでも、競争的な通貨安戦争回避を明記し、経済の不均衡是正にも一致協力する姿勢を貫いた首脳宣言となったようだ。
ルーラ大統領にとっては最後、ジウマ次期大統領にとっては最初の国際会議だった韓国サミットは、ホテルまで予約していたセルソ・アモリン外相の参加取消しの一方、ルーラ大統領がギド・マンテガ財相は次の会議で重要な役割を担う事になると発言するなど、国内外の動向が垣間見られるものとなった。
今回のサミットでは保護主義的色合いが出る事を懸念する声も出ていたが、11日の夕食会に続き各国首脳が協議を重ねた12日は、首脳宣言以外にも、均衡のとれた経済成長維持のための枠組合意など、複数の文書の調印が行われ、国際的な金融危機後も国際的な協力・協調の姿勢を貫く事を示す形となった。
ドル安、レアル高の影響が深刻なブラジルにとり、ドル安を招いた米国の追加金融緩和策や元の低レートを貫く中国などの通貨安戦争が最大の課題であった会議だが、首脳宣言は米中通貨への具体的言及を避け、「為替市場の柔軟性を高め」「通貨の競争的な切下げを回避」と明記したのみ。
今会議では大きな変化は望めないとの見方は既に出ていたが、基軸通貨であるドルの価値損失は深刻で、ブラジル通貨がG20でも最も強い通貨の一つである事も良い兆候ではないとしたジウマ氏は、新政権ではレアル高是正に取り組む事も明らかにした。
それでも、主要通貨を有する国が、互いの意見を尊重し、為替危機回避のために調整する準備があるとの姿勢を確認した事は一定の成果だ。
貿易収支などの経済の不均衡是正については、黒字や赤字の幅を国内総生産(GDP)の何%までに抑えるといった数値目標の導入を見送り、11年前半のG20財務相会合で検討を続ける。
一方、今会議で世界経済は複数通貨を基軸とする時期に入っていると発言したマンテガ財相について、ジウマ氏が次期政権でも起用との意向を明確にした事を受けたルーラ大統領は、「ギドは次の会議で各国が果たすべき役割について重大な発題を行う」と発言。モザンビーク訪問にも同行したアモリン外相が、直前になってソウル入りは必要なしと通告されたのとは対照的だ。
韓国画家が描いたブラジル首脳の似顔絵が、ルーラ大統領の絵ではなく、ジウマ次期大統領の絵だったのも時代の趨勢か。