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SA市長殺害裁判始まる=一般犯罪か政治絡みか=誘拐、拷問の後殺される=汚職発覚怖れ口封じと検察

ニッケイ新聞 2010年11月20日付け

 2002年に起きた大サンパウロ市圏サントアンドレ市のセウソ・ダニエル市長殺害事件の公判が18日から始まり、最初の容疑者に18年の実刑判決が下ったと19日付伯字紙が報じた。10月23日には、ルーラ大統領秘書室長と労働者党(PT)も同事件関係者として起訴されており、今後の裁判の行方が注目される。

 2002年1月18日発生の事件は、企業家のセルジオ・ゴメス・ダ・シウヴァ氏(通称ソンブラ)と共にレストランを出た元市長が、2台の車に襲われ、誘拐された後に殺害されたもので、市警が一般的な誘拐殺人事件と判断した後、政治事件として再捜査の対象となっていた。
 サンパウロ州検察局が政治事件として捜査を再開したのは元市長の家族からの要請によるもので、市長の右腕として補佐官を務め現在はルーラ大統領秘書室長のジウベルト・カルヴァーリョ氏が、少なくとも120万レアルを当時のPT党首ジョゼ・ジルセウ氏に渡したなど、同市での汚職を示す発言をしていたという家族証言を、19日付伯字紙が再掲載している。
 ダニエル氏は1997年から2002年に殺害されるまで市長を務め、02年の大統領選に出馬したルーラ現大統領の選挙参謀も務めた人物で、ルーラ氏当選後の入閣は確実と見られていた。
 ところが、当時のサントアンドレ市では、公共交通関連企業への袖の下の要求が横行。市の予算の一部や不正な方法で吸い上げられた金は、PTの選挙資金として送金されていたというが、それ以外の金がジルセウ氏個人の懐に入っていた可能性を口にしていたのがカルヴァーリョ氏だ。
 誘拐から2日後に発見された射殺体には拷問の跡もあり、検察では、一連の汚職に気づいた元市長が不正を告発するために集めた証拠文書のありかをはかせるために拷問後、殺害して口を封じたと見ている。
 18日に始まった公判では誘拐から殺害までに関係したと見られる人物が順次裁かれるが、最初の被告は元市長らが乗った車を襲った車の運転手で、元市長を監禁所に連れて行ったとされるマルコス・R・B・ドス・サントス。被告も証人も不在という異例の裁判で18年の実刑判決が出た事は、検察側の言い分がほぼそのまま受け入れられた証拠で、本人は現場には居なかったと主張する弁護側は控訴の構え。
 首謀者とされるソンブラの公判は2012年以降と見られ、裁判は長引きそうだが、PTを巡る不正資金の流れや同事件との関係について、カルヴァーリョ、ジルセウ両氏は事実無根で潔白との発言を繰返している。