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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年11月23日付け

 東京のマージャン店経営者と会社員を殺害した事件は、小欄で書くのもはばかられるほどに禍々しい。命乞いをするのには耳を傾けることもせずに被害者の首を電動のこぎりで切断するという残虐さである。この後、遺体を切り刻み海や山林に遺棄するの冷酷さには、同情する余地は一片もない。横浜地裁は「死刑」の判決を下し、この言い渡し対して妥当の見方が多い▼裁判員は男女の6人であり、裁判終了後に男性裁判員は「毎日が大変で気が重かった」と語っているが、「死刑」の判決には裁判官でも辛いし、ましてや素人の市民の悩みはより深い。昨年から始まった裁判員裁判では初の死刑判決だが、こんな苦しみを経ながらこの制度も成熟してゆくと信じたい▼唯一つ。裁判長が主文の言い渡しの後で被告に「裁判所としては、控訴を申し立てることを進めたい」としているのは、如何なものか。自らは「死刑」としておいて―高等裁判所に控訴しろというのは、何ともおかしな話ではないか。それにしても、人殺しや粗暴犯の犯罪の仕方はさまざまである。刃物で通行人を斬り付け刺殺もあるし、先だっては古希を超えた父が金属バットで40代後半の息子を殴打し殺している▼死刑については、議論も多いし近頃は「廃止論」が勢力を強くしているようだけれども、生きている人の首切り事件などの凶悪な犯罪があるかぎり、死刑制度の存続は必要だし、被害者の遺族らの感情をも汲み取るべきではないのか。死刑は単なる報復主義の主張もあるが、そんなことを考えるのも、今回の判決は最適な教科書でもある。(遯)