ニッケイ新聞 2010年11月25日付け
不妊症治療の第一人者でありながら、麻酔をかけた患者らへの強姦罪に問われていたロジェル・アブデウマシ元医師(66)に、23日、サンパウロ犯罪法廷が278年の投獄の判決を言い渡した。1995~2008年の期間中の犯行は少なくとも56件、39人の女性が被害届を出している。当日の法廷にはリオ、パラナ、ミナス、ピアウイ、リオ・グランデ・ド・ノルチなど各地の被害者が出向いた。24日付伯字紙が報じた。
2008年4月、同氏経営のクリニックで働いていた元職員が被害を届けたことからその犯罪は明るみに出た。被害者のほとんどが不妊治療で同氏のもとを訪れた患者で30~40歳女性。診療室、検査室での犯行が報告されたほか、半数以上の犯行は人口授精を行うための卵子摘出直後、麻酔をかけられて動けない状態の女性に対して行われていたことが明らかになった。250人の関係者から証言が得られた。
同裁判を担当する女性判事は「明らかに不快な事実。被害者の供述には怯え、嫌悪、苦悩、怒りが表れている」と結論。麻酔をかけられ抵抗できない状態で犯行が行われた点、医者という立場で患者の信頼を裏切った点を強調し、有罪を言い渡した。170人が同氏の気立ての良さを証言し、無罪を主張するロジェル氏の擁護をしたが、犯行の事実を否定するには不十分と判断した。
報告された56件中の48件に関して証拠が確認され、37人が被害にあったと認められた。強姦罪が6年以上、強姦未遂では2年として、同氏の投獄期間は計278年と計算された。
同氏の裁判は2008年に始まり同年8月に一時投獄されたものの、連邦最高裁判所(STF)予審で人身保護法の適用を認められ、4カ月後に釈放されていた。来週予定されるSTF法廷で人身保護法の適用無効の判断が下れば、再逮捕となる。しかし、同氏の投獄期間は3世紀分となるが、ブラジルの現行法での投獄期間は最長で30年と定められており、矛盾を指摘する声があがっている。
今回の事件で医師会から医師免許を剥奪された同氏だが、業界では名医として有名だった。元サッカー選手のペレ氏とその元妻、コメディアンのトム・カヴァウカンテ夫妻なども同氏の治療を受けていたという。