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高齢化進む日系社会を支援=JICA、研修受け入れで

ニッケイ新聞 2010年11月25日付け

 【共同】国際協力機構(JICA)が、南米の日系人社会を対象にした福祉関連の研修生受け入れを進めている。移住開始から1世紀以上が経過し、現地の高齢化が進んだためだ。「各国の福祉政策の遅れ」(外務省)もあり、日系人団体はさらなる支援が必要と訴えている。
 10月下旬、山梨県笛吹市の甲州リハビリテーション病院。ボリビアの日系2世で、医師の名嘉村洋子さん(45)が、白衣姿で器具や設備の説明を受けていた。12月中旬まで2カ月間、脳卒中の診断技術やリハビリの手法などを学ぶ。
 名嘉村さんの移住区は約120人が70歳以上だが、高齢者の疾病やリハビリに詳しい医師はいない。「父は2年前に脳梗塞で倒れたが、面倒を見られる人がいなかった。日本の良いところを取り込みたい」と話す。
 南米では多くの国でデイケアの概念が希薄で、福祉制度も未整備。そのため、森内閣時代の2000年、外相の諮問機関が支援を提言。以前から研修生を受け入れていたJICAは、現地の要請もあり、取り組み強化に乗り出した。
 その結果、ここ数年で来日者数が増加。ことしも名嘉村さんのほか、日系ブラジル人の女性理学療法士(30)ら約30人が、大阪や広島などで研修に励む。約20年前に始めた看護師らの派遣事業も積極的に推進。アルゼンチンのブエノスアイレスでは、ことし3月に開いた介護予防体操の講座が盛況だったという。
 ただ、制度面に加え、設備も不十分な南米の地で、研修生が日本で学んだ内容をどこまで実践できるかなど、課題は多い。南米の日系人は外務省による09年の推計で、ブラジルを中心に160万人超。高齢化は進む一方で、JICAの事業だけでは限界もある。
 関係者からは「日系人団体を土台にしたサービス提供の仕組み作りや、現地の人材育成が必要」との声が出る。海外日系人協会(横浜市)の岡野護事務局長(56)は「福祉に行政の手が回らない南米で苦労はあるが、高齢者のため、研修生はしっかり日本で学んでほしい」と話した。