ニッケイ新聞 2010年11月26日付け
【既報関連】応札期日の29日を目前にして、日本や欧州のグループが高速鉄道計画応札はせずと表明し始めた。入札延期や計画内容の見直しがされない場合、断念またはその可能性ありとされるのは、日本ならびにフランス、スペイン、ドイツの欧州勢で、19日に政府関係者が来伯した中国も事業計画そのものへの疑問を表明している状態だ。
各国からの入札延期要請にも拘らず、応札期日は11月29日との決定から1週間。従来から入札延期を求めていた技術先進国グループが、計画の不透明さと国内の建設企業との事業提携の難しさを理由に応札断念という結論を出し始めたようだ。
日本や欧州の企業の応札断念を示唆する記事は24日付フォーリャ紙、25日付エスタード紙などに掲載されたが、アルストムと中心とするフランス企業グループは、24日に、現状では採算確保の見通しが立たない事や、融資条件などの提示から応札までの期間が短く、計画全体の評価が出来ない事を指摘して応札しない旨を伝える文書をフランス大使名で送付。
2週間前に応札断念の意向を固めたというスペインも、計画全体の検討が間に合わず、29日までに条件を提示する事は不可能だという。
一方、2009年秋から三井物産、三菱重工、日立製作所、東芝の4社で参加を検討して来た日本も、ブラジルの建設業者が積極的な姿勢を見せない事と併せ、ブラジル政府が求める運営面の採算性が不透明で資金調達のメドも立たないなどの理由で、25日に入札不参加を決めたという。
24日付フォーリャ紙は、ドイツもフランス同様の理由で応札せずと見ているが、入札延期を求めなかった唯一のグループである韓国も、ブラジルの建設業者が参加を取り消す可能性が出てきたとの報道は25日付エスタード紙。韓国側が資金面などでより大きな責任を負うよう求めた事で及び腰となったようだ。
高速鉄道については、中国からもリスクが大き過ぎるとの意見が出された事があるが、経費全体の3分の2を占める建設を担当する国内業者が消極的な理由の一つは、地勢分析なども含めた計画内容への不安。トンネルなどを多用する高速鉄道でありながら普通の鉄道並みの経費で費用を算出した計画案の不備を指摘する声もあり、参加は落札者との直接交渉で決める方が無難という考えも広がっている。
国内企業やその加盟団体からも入札延期を求める声が出ている中、韓国グループに不協和音が噴き出したとあっては、29日の応札は更に不安定要素を増しそうだ。