ニッケイ新聞 2010年11月26日付け
25日早朝、先月4日よりサンパウロ市セントロのイピランガ大通りにある空ビルを不法占拠していた1200人への退去勧告が実行に移され、各家族は軍警察が誘導するなか、荷物を揃えて速やかに建物を後にした。50日間の占拠期間中、建物内では食堂が開設され、授業や集会が開かれるなど共同生活が営まれており、各々が別れを惜みつつ、その場を後にした。10月、11月付伯字紙がその様子を伝えている。
このマニフェスト行為は、FLM(住宅闘争前線)によって指揮されたもの。10月4日未明、同大通りのほか、ルス地区、ノーヴェ・デ・ジューリョ大通り、サンジョアン大通りのセントロ4カ所の空ビルが、居場所のない2500人によって占拠された。
FMLのコーディネーター・オスマール・ボルジェスさんは、IPTU(不動産税)の高騰を主張。参加者の一人で主婦のファビアーナ・アパレシーダさんは、600レアルの家計収入の半額の300レアルを家賃に当てており、「家賃を払うか、食べ物を買うかどちらかしか選べない」とその苦境を訴えている。
統一選挙戦直後に組織されたこの動きは、当選したジェラウド・アウキミン次期サンパウロ州知事へのアピール。サンパウロ市では昨年末、利用されずに放置されている市内の建物53軒を利用した低所得者向け住居建設プランを提示したが、手付かずのまま。計画では40万レアルをかけて改修工事を行い、2013年から提供することになっていた。
イピランガ大通りで占拠された建物は一昔前にホテル、カジノとして使用されていた15階立ての建物で、同プランで改修工事が考えられている場所の一つ。不法占拠者は、1アパートに9人以上で滞在。交代で24時間体制の警備、共同で食堂を開くほか、ビル内には約150人の子供たちも滞在していたことから2部屋を使って学校も開かれていたという。
不法占拠者たちは市から住居費の補助を提供されても退去を拒否し、ビルが改修工事開始に伴って引き渡されるまで居続けると主張していた。退去後もイピランガ大通り、レプブリカ広場、サンルイス大通りでデモ行進をして回った。