ニッケイ新聞 2010年11月26日付け
「しっぺ返し」こそが最強の生き方? 「裏切り」と「協調」の2種類の持ち札しかないトランプゲームのようなコンピュータープログラムの大会で、参加者14人(社会学者、政治学者、心理学者、数学者など)が各々に工夫した戦略を戦わせたが、優勝したのは「しっぺ返し」型だった。「協調」カードを出すばかりでは相手に裏切られて点が減るばかり。かといって「裏切り」カードばかり出しても意外に点は増えない▼最強だったのは「自分からは決して裏切らないが、相手が裏切ったら即座に裏切り返す。相手が〃改心〃して協調したら、すぐに自分も協調する」(『賭博と国家と男と女』竹内久美子、文春文庫、96年、47頁)という戦略だ▼各界の専門家による生き馬の目を抜くような戦略群の中で、単純明快な「しっぺ返し」戦略が優勝するのは不思議な感じがする。裏切りが日常茶飯事の世界でも、まずは相手との協調を尊び、その後は良くも悪くも相手と同じ行為を繰り返すだけで、最後は自分の利益が最大になるらしい▼もし「しっぺ返し」派が自分だけで、残り全員が常に裏切りカードを出す場合、初回に奪われた点を永久に取り返すことができず優勝はできない。だが「しっぺ返し」派が数人で固まって、全面裏切り集団に入っていくと、その数人だけがお互いにコツコツと得点を積み重ね、最終的に大成功を収めるという▼つまり「内輪づきあい」による助け合いが弱肉強食社会での最大の武器らしい。そして同書は「長いつきあいが人のふるまいを洗練し、穏やかにする」との教訓で締めくくる。どこかコロニアのあり方に似ていると膝を打った。(深)