ニッケイ新聞 2010年11月27日付け
地図を広げて朝鮮半島の西に広がる黄海にぽつんと延坪島が見える。ちょうど38度線付近にあり、軍事的にも大切なところであり韓国部隊が駐留し、民間人も1700人ばかりが漁業に従事している。その小さな島に北朝鮮の人民軍が砲弾を打ち込み兵士2人と市民2人が死亡し、多くの家屋が炎上、山火事も起こる惨事となった▼北朝鮮のこの無謀は許せない。たまたま黄海では韓国海軍が軍事演習を行っていたし、これへの反発かもしれないが、民間人をも殺害するような170発もの大砲撃は、誰が見てもおかしい。去る3月にも、この近辺で韓国の哨戒艦「天安」が、北朝鮮の魚雷攻撃で沈没し、46人の兵士らが死亡し国際的な話題になったのは記憶に新しい。こんな南北海軍の衝突は他にもあるし、この一帯は「海の火薬庫」とも呼ばれている▼とにかく―近頃の北朝鮮は、さながら「狂人」である。正恩氏が金一家の3代目に決まった頃から軽水炉の建設、ウラン濃縮活動の公開や核爆弾の実験準備と誤れる軍事力誇示に全力を上げている。日本をも攻撃可能な射程3000キロとかのミサイルを近く実験するらしいの報道もあるし、こんな金王朝の暴挙をぼやっと傍観しているだけでは済むまい▼今年はあの朝鮮戦争勃発から60周年になるが、あの戦いも金日成主席が侵攻を命令し、日本でも旧社会党は「韓国の侵略」論を展開した。こんなときの北朝鮮の砲撃である。まさか―次の首領様になった正恩氏への言祝ぎだとすれば、170発の大砲の轟音は、真にふさわしいが、殺された人たちにとってはたまったものではない。(遯)