ニッケイ新聞 2010年11月30日付け
【既報関連】リオ市北部ペーニャ地区のヴィラ・クルゼイロ制圧(25日)に続き、同ファヴェーラのコマンド・ヴェルメーリョ(CV)メンバーらが逃げ込んだアレモン地区も、28日の警察と軍の共同作戦後に国旗が掲げられ、奪回宣言がなされたと29日付伯字紙が報じた。リオ州保安局長官は28日、今後は市南部のロッシーニャやヴィジガウでの掃討作戦展開との見通しを明らかにした。
21日以来、犯罪組織による車上強盗や車両焼き討ちなどが頻発し、警察を中心とした掃討作戦展開中のリオ市で、28日にアレモン地区も奪回と宣言された事は国外のメディアでも流れた。
21日から繰り返し起きた事件は、ファヴェーラの治安回復・維持のために導入された平和駐留部隊(UPP)により麻薬売買などが困難になったCVや、自分達の領域へのUPP導入を懸念するアミーゴ・ドス・アミーゴス(ADA)が刑務所内のCVリーダーの指示で起こしたもので、年末に予定されていた掃討作戦開始を早めた。
23日に始まった掃討作戦は24日に本格化。25日は海軍戦車も投入してペーニャ地区のVクルゼイロを制圧した。
この時、同地区CV約200人が逃げ込んだアレモン地区では26日、連邦警察の他、落下傘部隊を含む軍人800人や新たな戦車投入を得た包囲網が敷かれ、CV側が軍用ヘリを攻撃する場面なども見られた。
Vクルゼイロからの応援も加わったアレモン地区CV勢力は500~600人とされていたが、28日の作戦で逮捕されたのは20人。27日の最後通告後、一部幹部の逃亡やメンバー投降も起きており、徹底抗戦も予想された28日の攻防は思いの他早く終った。
警察と軍が2方向からの侵攻を開始したのは8時だが、9時20分には軍警指揮官が制圧を口にし、10時からは家宅捜査開始。14時には高見に国旗が立てられ、地区制圧を印象付けた。
家宅捜査では、大麻40トンやコカイン150キロ、小銃50丁などが押収され、アレモン地区がCVの心臓部とされてきた事を改めて証明。リオ最大の犯罪組織CV弱体化は必至との見方が広がる一方、制圧地区への警察駐留を怠れば元の木阿弥との警告も出、州保安局はUPP設置までの軍駐留を求めている。
アレモン地区潜在のCVメンバー捜索と同時に保安局が考えるのは南部にあるADA支配のロッシーニャやヴィジガウでの掃討作戦だが、リオの治安回復には、CVやADA根絶と共に、麻薬流通や麻薬利用者の断絶、警官や政治家も絡んだ汚職体質改善も必須だ。