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木川医師に社会起業家賞=医療トラックで各地巡り診察=癌で亡くなった父の思い胸に

ニッケイ新聞 2010年12月2日付け

 「医者になると誓ってほしい。患者の気持ちが分かる優しい医者に」―。そう言い残して20年前癌で亡くなった父親の言葉を胸に、木川ロベルト医師(40、二世)は多くの市民の健康を願って医療設備を備えたトラックで各地を巡る。そのCIES(健康・教育センター)プロジェクトを立ち上げた木川医師にこの度、国際的に知られるスイスのシュワブ財団から社会起業家賞が贈られた。26日付フォーリャ紙が報じた。
 今回の授賞は、国内から挙げられた266人の中から選ばれた。世界14カ国で授与される同賞は、社会への貢献、革新性、持続可能性などを兼ね備えた社会活動を称えるもの。授賞式は、先月25日にサンパウロ市MASP(サンパウロ美術館)で出席者400人を前に行なわれた。
 パラナ州ロンドリーナの大学で学んだ木川医師は、サンパウロで外科医師として働いたほか、パラナ州奥地などで日系家族の診療にあたっていたという。木川医師を医者としての仕事に向かわせた確固たる動機は、1人息子を可愛がってくれた父クニマサさんが亡くなる直前に残した冒頭の言葉だった。
 当初の目標はアフリカでの医療だったが、ブラジル各地でも医療が行き届かない人がいる事に気がつき、それを「ブラジルの中のアフリカ」と表現する木川医師は、大型トラックに最新型の医療機器を積んだ移動式医療センターを発案し、2007年から各地での予防検査を始めた。
 長さ15メートル、診療スペース100平方メートルのトラック内部は分野別に仕切られ、内視鏡検査、超音波検査、マンモグラフィー検査など10項目にわたる専門の検査を行うことができる。こういった医療機器を完備した移動式の医療は世界でも最大規模。今までには腸内の腫瘍が見つかり、車の中で手術を行った人もいるそうだ。
 他のボランティアの医師を引き連れ、2年間でパラナ、サンタ・カタリーナ、サンパウロ州3州の15都市で2万4千人の診察を行ってきた。1都市に約15日滞在、1カ月で3千人の予防検査を実施できる。同プロジェクトの目的は細かなケア、予防の促進、健康管理の普及の3点。クニマサさんの言葉を「父が残してくれた最大の遺産だった」と胸にする木川医師は、1人でも多くの人の健康を守ろうと今日も各地を回っている。

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