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国境警備に1500人を増員=麻薬対策は全国規模で=バズーカまで持つ犯罪組織=リオの逃亡者サンパウロ市で拘束

ニッケイ新聞 2010年12月3日付け

 麻薬密売組織コマンド・ヴェルメーリョ(CV)が支配していたリオ市北部ペーニャ区のファヴェーラ制圧後、連邦政府や州政府は、麻薬対策の一環として、国境や州境の警備を強化し、麻薬や武器、犯罪者の動きを封じ込める事にしたと2日付伯字紙が報じた。

 世界的にも麻薬流通の拠点として知られるブラジルは、大麻やコカインなどの生産国であるラ米諸国と長い国境線を共有しており、国外からの流入防止は麻薬対策の第一歩。その意味で、リオの麻薬組織撲滅作戦支援のための国境警備強化は国レベルの問題でもある。
 警備強化の重点地域はボリビアやパラグアイとの国境で、軍や連警、道路警察、州警察の特殊部隊から1500人を動員の予定。11月17日に全国で22人が逮捕された麻薬密売組織の麻薬供給源がボリビアなど、国内の犯罪組織への麻薬や武器の8割は前記2国から供給されている。
 また、リオ市内で最大勢力を誇る麻薬密売組織CVが、警察や軍の共同作戦でペーニャ区のファヴェーラの数々を放棄した後、自州内に潜入する事を懸念するのは、サンパウロ州やミナス、エスピリトサントなど。例えば、1日にサンパウロ市南部で身柄を拘束された23歳の男性は、アレモン地区からの逃亡者の一人でCV幹部のいとこ、前科もある事が確認されている。
 また、パラグアイやボリビアと接するマット・グロッソや南マット・グロッソ、麻薬や武器供給が確認されているその他のラ米諸国と接するアマゾナス、ロンドニア、パラナ、パラー、アマパーの各州も、犯罪者らの流入を防ぐため、警備を強化するという。
 一方、CV支配から奪還した制圧地区の捜索を続けるリオ州警察は、10日に及ぶ掃討作戦で47トンの麻薬を押収し、1日午後からは、最初に押収した42トン分の焼却処理を開始した。
 また、1日の捜索では戦車攻撃用のバズーカが発見されるなど、犯罪組織の武装力は想像以上。パラナ州カタンドゥーバの刑務所には、11月21日から始まった車両や警察関連施設攻撃を指示したと見られるCV幹部が、訪問した弁護士に小銃の調達を命じた場面の録画もあり、刑務所収監者への訪問規制の必要も再度議論されている。
 1日に制圧地区を訪れた州保安局長や軍警の監察官らは、拍手と共に、兵士や警官による暴行や搾取などの苦情を直接受け、善処を約束。市内のファヴェーラ出身兵の中には、帰宅しても家に入れるなと犯罪組織から脅された家族を案じてキャンプ生活を続ける者も居る中、住民との信頼関係維持は麻薬対策や治安対策の根幹をなす事柄の一つとの認識が不可欠だ。