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日語で講演こなす伊系4世=親日家パンタロットさん=「祖父に勧められて」=毎日4時間勉強に励んだ

ニッケイ新聞 2010年12月3日付け

 日本語好きが高じて南米公文教育研究会(北川直也社長)の社長通訳にまでなったイタリア系4世がいる。アンドレ・パンタロットさん(39)はペラペラと日本語での講演をこなし、インターネットで購入した趣味の専門誌を読み漁っている。いったいどうして日本語がそんなに好きなのか。日本語との不思議な出会いと、言葉の面白さを聞いてみた。

 「近くに日本語学校がある。せっかくだからそこで勉強しろって、おじいちゃんが言うんですよ」。イタリア系二世の祖父は、以前サンパウロ州地方部に住んでいた時に日本移民と一緒に働いた経験があり、片言ながら日本語を理解し、日本文化に親しみを持っていた。
 サンパウロ市生まれのパンタロットさんが日本語学習を始めたのは、親の都合で祖父の住むインダイアツーバに引越しした15歳のときだった。
 祖父の勧めに従い、父と二人でインダイアツーバ日本語学校に申し込みに行くと、「会員しか入学できない。日本語は難しいからお引き取りください」と丁重に断られた。
 それを聞いた祖父は「自分も行く」と言い出し、今度は3人で向かった。対応に出てきた日本語教師に対し、祖父は片言の日本語で一生懸命に話し、「何年かかってもいい。この子は勉強する」と説得した。その姿勢に感動した教師は、日本人会に諮ってみると約束し、その結果入学が認められた経緯がある。
 「覚えられるかどうか分らないけど、とにかくやってみようという軽い気持ちでした」。パンタロットさんだけが非日系でしかも高校生、他の生徒はみな小中学生だった。「私は少々変わったお兄さんに見えたかもしれません」と笑う。一週間でひらがなを覚えることができ、「これならいけるかも」と自信が付いた。
 「みんな温かく受け入れてくれ、先生はとても丁寧に教えてくださいました。すばらしい一年でした」とふり返る。
 同日語学校の教師が公文式の指導者をしていた関係で、次の3年間は公文の教室で勉強した。「教材そのものを使って勉強するより、辞書を引いている時間が長かった。一日に最低4時間は勉強した」という。その努力が認められ、18年前に現職に就いた。「日本語に投資した時間と努力は決して無駄ではなかった。まったく後悔していない。ですから誰にでも日本語の勉強を勧めたい」。
 彼は流行のマンガやアニメには興味がない。10年前からプラモデルの趣味が高じて、静岡県に本社があるタミヤ(旧田宮模型)に日本語でファンレターを書き、それが社内報にも掲載されたという。5年前に出張した折に直接訪れ、「普通は見せてくれない金型や設計部門まで見せてもらい感激しました。これも日本語を勉強したおかげ」と感動をふり返る。
 日本の専門誌を取り寄せ、塗装、改造などにも意欲を燃やす。「欧米にもプラモデルはありますが、やはり日本の方が精密」と評価する。
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 ブラジルの公文教育研究会は1977年にロンドリーナから出発した。南米ではチリ、亜国、コロンビアに法人があり、ボリビア、ペルーにも教室が開かれている。
 ブラジル内では数学、ポ語、英語、日本語など全部で2800教室も行なわれており、生徒は非日系人を中心に14万人を超える。日本語は130教室で2300人が学んでいる。「うち半分以上が非日系かも」という。
 当地では80年代以降、公立教育が弱体化する中、大学進学するのに私学の進学校、予備校、英語などの語学学校が激増してきた。しかし、小中学生向けの〃塾〃という学習補助システムは今もってほとんど存在せず、公文の活躍の独断場になっているという。