ニッケイ新聞 2010年12月4日付け
農村地域の治安対策は日系農業者にとって大きな問題。各地の関係者には日々頭を悩ませている人もいるだろう。こうした状況について皆で意見を交わす機会を設けようと、中沢宏一・宮城県人会長が代表を務める青葉健康生活協会が「農村地域防犯セミナー」を企画している。開催は来年1月を予定。サンパウロ州軍警と協力して駐在所を設置、防犯に効果を上げているモジ市ピンドラーマ植民地の取り組みなどを紹介する予定だ。中沢会長は「皆さんの意見を寄せてほしい」と呼びかけている。
ピンドラーマ植民地は住民4800人のうち、約800人が日系人。以前はピンドラーマ農村協会の治安委員会が防犯にあたっていたが、強盗や泥棒、車両解体盗など年に130件ほどの事件があったという。それが駐在所設置から2年後には、年30件ほどに激減した。重要なのが、駐在所と地元住民との信頼関係だ。
ピンドラーマでの駐在所設置は、JICAとサンパウロ州軍警の提携による日本の地域警察(交番)制度移植の一環。前任のモジ軍警野村ススム・ミルトン大佐によって始まった。
警察官1人が家族とともに住み込みで勤務する形式で、ブラジルでは初めてのこと。現在はワグネル・ヌネス隊員が駐在し、パトロールや住民の応対などを行なっている。地域住民も隊員への地理案内などで協力する。「警察と住民との関係はとても良い」とヌネスさんは話す。
先月同地を視察した中沢会長は、「青葉祭りには地方の人も来るので、治安セミナーのことを考えた」という。軍警の交番制度協力は、中沢さんが県連会長時代の第8回日本祭りでも紹介されたことがある。駐在所は同農村協会近くの州道沿いにあり、「互いに目が届く場所」。また同会では、軍警に認められた車を6台持ち、防犯活動に当たっているという。
中沢氏を案内したモジ軍警の田口コウキ大佐は「この駐在所形式は警察と住民が一体となって家族的な付き合いができる。田舎(農村)にふさわしく、犯罪予防に効果的」と評価。治安委員長の福田ジョルジさんも「成果を挙げるには警察と地元民との信頼関係が重要」とし、日頃から互いに協力し合う関係を構築し、維持していくことが大切と話している。
セミナーでは田口大佐など軍警関係者、ピンドラーマ治安委の福田氏、長尾ミチロウ委員など地元関係者が出席して同地の取り組みを紹介。このほか、他地域での治安・防犯の現状発表、参加者の意見交換も行う考えだ。サンパウロ州だけでなく、他州からの参加も期待している。中沢会長は「それぞれの地域にあわせたやり方があると思う。そのための意見交換の場になれば」と話し、「意見や要望を寄せてほしい」と呼びかけた。
セミナーは現在のところ、来年1月15日に宮城県人会館で開催を予定している。
同セミナーに関する意見、問い合わせは宮城県人会(Associacao Miyaguikenjinkai do Brasil)まで。【連絡先】住所=R. Fagundes, 152, CEP 01508-030, Liberdade, Sao Paulo、電話=11・320・3265、メール=festival@tanabata.com.br