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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年12月4日付け

 古いことながら「宮中某重大事件」というのがあった。大正天皇の皇太子・裕仁(昭和天皇)の妃として久邇宮邦彦の第1女の良子が内定すると、元老・山県有朋が反対し内定の取り消しを迫った事件である。山県は松下村塾に学んだ長州藩であり、良子さまは薩摩藩・島津家の血筋をひくので「色盲」の疑いがあるとの理由だったが、杉浦重剛や右翼の大物・頭山満らの反撃もあり、宮内省は内定不変更を発表し事件は落着した▼山県有朋ともあろう人物が、薩摩閥の勢力拡大を懸念しての騒動だったのは、何とも情けないが、この「某重大事件」は、恐らく―皇室に対する最大の関与であり介入であったと思われる。ここ数年も傲慢な政治家による皇室への圧力が目に付くが、とてものほどに―山県の薩長抗争を笑い飛ばすわけにもいかない。1昨年の12月には、民主党の小沢一郎幹事長(当時)が、中国ナンバー2の習近平国家副主席と陛下との会談を迫る大いなる不祥事を巻き起こしている▼この騒動の責任は小沢幹事長にあるが、もしかして政界に「皇室を自由自在にする」の意識があるとすれば、とんでもない誤りと指摘したい。あの議会開設120年の記念式典における民主党の中井洽・予算委員長の暴言も許し難い。陛下の入場を起立して待っていた秋篠宮に向かい「早く座れよ。こっちも座れないじゃないか」と声高に語ったのだから、酷いの一語に尽きる▼まあ、この人は元々が社会党であり、革新性も強いのだろうが、みんなの党・渡邊喜美代表の「土下座して謝れ」ではないけれども、この不謹慎さは厳しい懲罰に価する。(遯)