ニッケイ新聞 2010年12月7日付け
中央銀行が3日、インフレ加速回避のため、預金準備率引上げなどの対策を発表したと4日付伯字紙が報じた。食料品や教育費の値上りでインフレ圧力が高まる中、クレジットの拡大ペースを減速させる事で、政策金利(Selic)引上げを少しでも先延ばしする方策と見られている。
エンリケ・メイレーレス中銀総裁が次の段階では政策金利引上げと明言したインフレ抑制策の第一歩は、預金準備率引上げという伝家の宝刀だ。
各銀行が中銀に収める預金比率は預金の種類によっても異なるが、新預金準備率は現行の8~15%から12~20%となり、市場からは国際的な金融危機前を100億上回る610億レアルが吸い上げられる。
中銀に収める準備金が増えるという事は、各銀行が融資に回せる資金縮小を意味する。現在の様に容易にローンが組めると、低所得者も車や家電などを購入し易くなる一方、急速なクレジット拡大で消費が加熱すればインフレが進み、バブルを形成する可能性や将来的な債務不履行増加を招く危険性も高くなる。
このため、預金準備率引上げと併行してとられた処置が、個人に対する長期融資の制限だ。具体的には、銀行が個人に融資する時に保持すべき資金額が、24カ月以上の融資なら現行の11%から16・5%に引上げなどの処置がとられた。
つい先日、頭金1レアルで自動車購入などという宣伝した店があった事からは考え難いが、この処置の影響は消費者に直結。ここ1年で50・9%増えた車両購入の場合、24~36カ月払いなら20%以上など、従来以上の頭金を要求される可能性大となる。
インフレ抑制策として政策金利引上げを行ってきたメイレーレス中銀総裁が、7―8日の通貨政策委員会(Copom)直前に預金準備率を引上げた事は、今回の委員会では金利引上げをしないとの見方を裏付けたが、総裁自身がクレジット拡大に伴うバブル出現防止策という預金準備率引上げは3月にも行われ、4月には政策金利引上げが行われている。ギド・マンテガ財相の、ジウマ次期大統領はインフレ抑圧のために必要な事は全て行うよう指示したとの言葉からみて、来年早々の政策金利引上げは避けられないようだ。
今回のインフレ対策発表は年末のクリスマス商戦の真っ只中だけに、売れ行き懸念の声も出たが、年末商戦の販売予想は前年比12%増から11%増に下方修正された程度。消費者が今回の政策の影響を肌で感じ始めるのは1月以降という。
なお、不動産融資や農業融資、トラックやバス購入のための融資は今回の対象から除外された。