ニッケイ新聞 2010年12月9日付け
2011年度政府予算案報告担当者であるブラジル労働党(PTB)ジン・アルジェロ上議が、汚職暴露記事後の圧力で予算案報告の責任を降りたと8日付伯字紙が報じた。与野党議員からの圧力には対抗する姿勢を見せたものの、予算案の年内承認をとの政府の圧力に屈した同上議だが、状況によっては、次期政権は確定予算がないままの見切り発車となる可能性も出てきた。
アルジェロ上議の汚職疑惑表面化は5日付エスタード紙記事が発端で、6日の時点で、予算審議の延期と共に、事実関係の解明や報告者交替などを求める声も出始めていた。7日の辞表提出を受け、8日以降の予算説明は労働者党(PT)のイデリ・サウヴァッチ上議が務める事になる。
両院選出の委員達の審査を経た後、議会提出となる予算案には、各議員が提出した企画書に基づく予算も含まれるが、5日付エスタード紙によれば、今年の場合、アルジェロ上議のロビー活動により観光や文化関係のイベント経費として不正に動いた金は、4月以降最低300万レアル。振込先は庭師と修理工が代表の架空企業RCアセソリア・エ・マーケティングの口座だという。
また、7日付エスタード紙には、2011年度予算案にも、今年同様、架空団体名を使った企画書による請求が含まれており、総額は最低1600万レアルとの記事。
7日付フォーリャ紙には、来年度予算案にある上議の友人が統括する非政府団体による25万レアル相当の企画は、友人の説明と上議提出の企画書とで内容がまるで異なっていたとの記事もある。
一連の報道で架空団体と指摘されたのは、RCアセソリア他、ガラス屋と住所を同じくし53万2千レアル受領のレノーヴァ・ブラジル研究所、同団体主の息子経営で110万レアル受領のブラジル・センプレ・ア・フレンテ研究所、他議員提出の企画でも恩恵を受けたプラナウト・セントラルや、教育や保健、観光を売り物にしたInbraestなどだ。
エスタード紙によると、企画書提出と関係省庁予算の確保が自分の責任とするアルジェロ上議は、自身提出の企画についても企業の実態や企画の進捗状況を把握しておらず、企業の監査や企画の進捗状況把握は会計検査院(TCU)や国庫庁の管轄と発言。TCUは他議員も含む事実解明調査を始めている。
与野党議員や政府の圧力により同上議が予算審議委員も含む辞表を提出した事で予算審議は年内終了とする政府に対し、関係者からは、22日迄の予算承認は困難で、次期政権は確定予算もないまま発足となる可能性ありとする声も出ている。