ニッケイ新聞 2010年12月14日付け
コマンド・ヴェルメーリョ(CV)が支配していたリオ市北部のヴィラ・クルゼイロやアレモン地区制圧から2週間経ち、麻薬密売者や流れ弾に怯えながら暮していた住民が平静さを取り戻した様子を13日付エスタード紙が報じた。同日付フォーリャ紙は、サッカーW杯前の治安確立のため、2年以内に麻薬密売組織の本部占拠との州保安局目標について報じている。
子供達が道に戯れ、鳥の丸焼きを求める人の列や、日用品やビールなどを売るビロスカにたむろしてトランプや談笑を楽しむ姿があちこちに―。どこの町でも日曜の朝見られる光景だが、リオ市最大の麻薬密売組織CVの巣窟だったVクルゼイロやアレモン地区では、防弾チョッキに身を固め、銃を持つ警官や兵士もそこここに見られる。
11月25日と28日の侵攻作戦で制圧される前の同地区でも、凧揚げやサッカーに興じる子供の姿はもちろんあった。だが、制圧後は警官や兵士による警備の下、密売者達の顔色を伺う必要も流れ弾の恐怖にさらされる必要もない生活が繰り広げられている。
丘の上で凧揚げに興じ路上でサッカーをする子供達、ビロスカでビールを飲み交わし、トランプに興じる人々の姿は、密売者の支配から解放された住民の安堵と喜びの表れでもある。
「これまでは、子供達が遊んでいてもお構いましに、奴らを乗せたバイクが2台も3台も全速力で駆け抜けていったもんだ」というバールの主によれば、制圧後の今は、夜は出歩かなかったお年寄りも店に来るという。アレモン地区に50年住む別の男性も「昨日はポルトガルからの観光客が来たし、今日は丘の上で録画している人が居る」と変化を語る。
麻薬や武器の貯蔵地かつ販売拠点であったVクルゼイロやアレモン地区制圧で勢力がそがれたとはいえ、CV残党は市内に潜伏しており、警察の掃討作戦は継続中。中流階級も客に持つ南部のアミーゴ・ドス・アミーゴス(ADA)や西部に根を張るテルセイロ・コマンド・プーロも含め、6つのファヴェーラ制圧が今後の主要課題という。
警官や消防士、政治家が絡むミリシア支配地区は首領級さえ捕えれば武力行使は不要とみる保安局は、14年のW杯までに平和駐留部隊(UPP)40の設置を目標とするが、最大の課題は12500人の人員確保。
現在制圧地区の警備にあたっている軍兵士の駐留形態などは13日中にも決まる見込みで、国防相は、リオ州保安担当者との定期会談なども盛込んだ計画を打ち出す予定だという。