ニッケイ新聞 2010年12月18日付け
お坊さんたちも、座る暇もないような忙しさから生まれたという師走は、庶民にとっても、やれ歳暮だ年の市だとせわしい日々が続く。8日はお釈迦さまが悟りを開いた「蝋八会」であり、仏教では最も大切な日としている。あの真珠湾攻撃もこの日なのは、偶然なのだろうが、日本人としてはやはり記憶に留めたい。そして13日は「煤払い」で神棚の煤を払い落とし正月を迎えるにふさわしいものにする▼1年のゴミを払う掃除もあって多くは28日に一家を挙げエプロン姿で箒や叩きを手に大活躍する。田舎では、この日に餅搗きをし、戦後の食糧危機の頃は東京の親戚などに鉄道便で贈り喜ばれたものである。注連縄造りや門松の準備もあるので大忙しとなる。家の中に確か楓の枝かに小さな餅を張り着けて飾ることもあるし、もうゆっくりと休み一服するどころではない▼このほかに忘年会の「呑み会」が毎晩のように続く。サラリーマンが、これを欠席するようでは、もう出世の見込みはゼロ。宿酔の薬を胃に流し込みながらの善戦と相成り、社長と専務は無理にしても、せめて課長か部長にはと精励するのだけれども、これとて神様がきちんと約束して呉れるわけでもないし、余り期待しない方がいい。と、自棄になって泥酔すれば、これはもう平社員ですな▼と、男の天国は、海の荒波を乗り切ってブラジルにきてからも、しっかりと守っているのは、さすがに大和の兵と褒めそやしていいものやらどうやら―。それなのに、日本の年末の仕来りが忘れがちなのは、どうした事か―やはり異国のせいだろうか。(遯)