ニッケイ新聞 2010年12月21日付け
BCG接種の普及などで患者が減ったといわれつつ、国内では現在でも毎年7万2千人が新たに発病し4700人が死亡する結核について、国民の知識の欠如や医療現場での診断の遅れなどが見られると20日付エスタード紙が報じた。世界的に見た場合、ブラジルは患者の8割が集中する22カ国のリストから脱出できずにいるのが実情だ。
国内での感染症による死者数では、エイズ、敗血症、シャーガス病に次ぐ第4位の結核だが、症状や感染経路などは余り知られておらず、医療現場でも誤診や診断の遅れが目立つ病気の一つだ。
ダッタフォーリャが全国143市で16歳以上の2242人を対象に実施した調査によれば、結核について知っていると答えた人は94%いたが、感染経路について正しく答えられた人はわずか1%だったという。
結核は、結核菌を有する患者の咳やくしゃみ、対話などによって大気中に散った菌が、肺などの呼吸器官に定着して起きるが、中枢神経やリンパ組織、非尿生殖器、骨、関節などにも感染する例もある厄介な病気。乾いた咳や微熱、胸や背中の痛みなどが主な症状。9割は肺結核で、重症になれば、激しい肺出血と、それに伴う喀血や窒息死も起こり得る。
一方、無症状の潜伏感染も多く、潜伏感染で最終的に症状が出るのは1割程度。放置すれば、感染者の半分が死亡するというが、結核患者は、ある程度進んで症状が出てから救急外来を受診して判明するケースが大半だという。
最初に罹った兄から姉妹そろって感染した47歳の料理人エディナ・アパレシーダ・コスタさんも、最初の医者は肺炎、その次の医者も脊椎の問題と誤診。最終的に結核と判明した時は相当重症となっており、妹は死亡、エディナさんも右肺を失った。
治療せずに放置された患者1人からは年10~15人が感染など、早期発見と早期治療が必要でありながら医療現場の立ち遅れが目立つため、リオ、ミナス両州のSUS(統一医療保険システム)では来年、従来は2カ月かかった感染の有無判定が2時間で可能という画期的な検査法を試験的に導入する。従来の治療薬に対するアレルギーの有無や病原菌が薬品耐性を持っているか否かも同時判定できる検査の導入で実績が上がれば、路上生活者や先住民に対する診断も容易になると見られている。
一方、ブラジルの結核撲滅への最大の難点は治療放棄率が12%と高い事。治療を途中で止めると菌が薬品耐性を持つため、完治するまでの治療継続は基本中の基本。治療は6カ月かかり、薬の飲用開始後2週間はまだ菌が出るため、感染を広げない工夫も必要だ。